1970年代初期を代表する20曲

キャロル・キング 『イッツ・トゥー・レイト』(1971年)
(原題:It’s Too Late)


キャロル・キングはティーンエイジャーの頃には既に、ニューヨークの有名なブリル・ビルディングで『ウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロー(原題:Will You Still Love Me Tomorrow)』などのヒット曲を制作していた。しかし彼女の本格的な音楽生活のスタートは、60年代の終わりにローレル・キャニオンへ移ってからだった。直前のジェームス・テイラーとの破局をテーマにしたトニ・スターンの歌詞は、恨みつらみのない大人の別れを表現している。キングの大人の雰囲気が漂うけだるいヴォーカルは、彼女がまだ30歳にも達していないとは思えない。最後のコーラス・パート直前でフェード・アウトするカーティス・エイミーによるソプラノ・サックス・ソロは、「愛は思いがけず消え去ることもある」というこの曲に込められたメッセージを表現している。

ザ・ローリング・ストーンズ 『ブラウン・シュガー』(1971年)
(原題:Brown Sugar)


それまでのストーンズは60年代の理想主義にウィンクか唸り声をミックスしていたが、70年代に入ると彼ららしいクールな荒々しさを前面に出すようになった。ロックン・ロールをベースにした『ブラウン・シュガー』は、表面上はパーティ・ジャムに聴こえるが、黒人の暮らしや文化から悪びれもせずに盗んだもの(ブルーズ)に、ローリング・ストーンズ自身の富と名声とセクシーな魅力を加えてできあがった曲である。『ブラウン・シュガー』は、「すべての文化の記録は野蛮な行為の記録とも言える」というヴァルター・ベンヤミンの言葉がもとになっている。

スライ&ザ・ファミリー・ストーン 『ファミリー・アフェア』(1971年)
(原題:Family Affair)


スライ・ストーンの最後のヒットチャート・ナンバー1となった曲で、彼のキャリア中で最大のヒット曲。サブマリンR&Bのダークな隠れた傑作。スライの妹ローズが両手をメガホン代わりにタイトル・ラインを歌い、ボビー・ウーマックが怪しげなワウワウ・ギターを奏でる。その他のほとんどのパートはスライが担当し、特に“ファンク・ボックス”と呼ばれた彼のドラムマシン(Maestro Rhythm King MRK-2)は有名である。ウーマックのアイディアでスライは、離れた場所にあるピアノの上に横たわり、マイクを自分の頭の横に置いて歌った。そうして遠くから聴こえるユニークなヴォーカル・サウンドができあがった。不可思議な歌詞は、ウッドストック後の喪失感やブラックパンサー党からのプレッシャーを思わせる。曲のリリース時スライは、「この曲は、遺伝的に避けられない問題や生活環境の問題を抱えたとある家族の出来事を歌ったものさ」とローリングストーン誌に語っている。

Translation by Smokva Tokyo

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