名盤『ロウ』でロックの歴史を塗り替えたデヴィッド・ボウイとブライアン・イーノ

WILL HERMES | 2017/01/22 13:00

| ブライアン・イーノとトニー・ヴィスコンティ、そしてベルリンという街にインスパイアされたデヴィッド・ボウイの1977年作『ロウ』 ロック史を塗り替えた実験作の計り知れない影響力とは(Photo by Daily Mirror/Mirrorpix/Mirrorpix via Getty Images) |


イーノの手腕がより如実に発揮されているのは、ほぼ全編がインストのB面だ。その幾つかは、ボウイが契約に関する所用でパリに出向いている間に作られたという。不穏な『ワルシャワ』の大部分はイーノが単独で作り上げたが、同曲の肝となっているのが歌詞を排したボウイのヴォーカルであることは疑いない。ピッチを極端に上げて作ったそのサウンドは、彼がパリで手に入れたブルガリアの少年聖歌隊のアルバムにインスパイアされて生まれたという。

近作のようなヒット作を期待していたRCAレコードは、美しくも奇妙な『ロウ』を「商業的には自殺行為に等しい」と捉えていた。ボウイが思い描いた「誰も耳にしたことのない音楽言語」を具現化してみせた同作は、それまでのロックのイメージを完全に覆した。現在においても、同作をフェイバリットに挙げるミュージシャンは後を絶たない。「『ロウ』、特に『ワルシャワ』を聴いて、僕は音楽の持つ限りない可能性というものを初めて知った気がした」デイヴ・シーテックはそう語る。彼が率いるTV・オン・ザ・レディオは、後にボウイと曲を共作している。

ボウイがこの世を去った後、彼の作品の多くにギターで参加しているカルロス・アロマーは、自身がミュージカル・ディレクターを務めた『ロウ』のインスト曲だけを聴き続けていたという。時代を揺るがした同作を初めて耳にした時の衝撃について、彼はこう話す。「照明を全部消した部屋であのアルバムを聴いていると、まるで宇宙に連れて行かれるような気がした」少し寂しげに、彼はこう呟いた。「本当に最高の気分だった」



Translation by Masaaki Yoshida

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