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全文翻訳|オバマ大統領、最後のスピーチ

JON BLISTEIN | 2017/01/20 12:00

| (Photographer: Christopher Dilts/Bloomberg via Getty Images) |


長期にわたるこの状況を打開する特効薬はありません。取引は自由である上にフェアであるべきだと考えます。しかし経済を混乱させる次の波は、海外からではなく、国内での次々と進むオートメーション化からやってきます。そしてそれは中流階級から多くの質の高い仕事を奪っています。

我々には新たな社会契約が必要です。子供たち全員に適切な教育を受けさせ、より良い待遇を求める労働組合を結成できるだけの力を労働者に与えられるような社会的仕組み作りが必要です。さらに社会的セーフティ・ネットを整備し税制改革を推進することで、国からの利益を得る企業や個人が果たすべき義務を怠らないようにする工夫も必要です。それぞれの目標を計画通りに達成するための議論は大切ですが、目標を立てるだけで満足してしまってはいけません。全ての国民に等しくチャンスが与えられなければ、これからの数年間は、我々の前進を妨げてきた不平や分裂がより一層進むだけです。

我々の民主主義には、建国以来引きずる脅威があります。私が大統領に選ばれてから、人種問題を超えたアメリカ論が起きました。悪意がないにしろそのようなビジョンは決して現実的ではありませんでした。人種はアメリカの社会において影響力が強く、たびたび分裂を引き起こす要因となっています。私も長く生き、その状況を見守ってきましたが、人種同士の関係は、10年、20年、30年と年を経るごとに改善されてきています。これは統計上だけでなく、若者の政治的志向を見てもわかります。

しかしまだ理想的な段階に至ったとは言えません。我々国民にはさらなる努力が必要です。すべての経済問題が、勤勉な白人中流階級と不当な扱いを受けているマイノリティとの間のせめぎ合いとして括ってしまうと、ひと握りの富裕層がますます潤い、労働者階級は人種にかかわらずおこぼれを巡って争いを繰り広げる、という構図が続くのです。外見が異なるという理由だけで移民の子供たちへの支援を怠れば、我々自身の子供たちの将来性も狭めてしまいます。褐色の肌をした多くの子供たちが将来、アメリカの労働を担うようになるからです。我々の経済をゼロサム・ゲームとする必要はありません。昨年は、人種や年齢層、性別にかかわらず全ての人たちの収入が上昇しました。

雇用、住宅供給、教育、刑事司法制度などにおける不平等を禁じる法律は、将来的にも断固として維持すべきです。これこそ我々の憲法や最も高い理想が必要とする理念です。法律だけでは十分ではありません。皆さんの心が変わらなければなりません。多様化を増すこの国の民主主義を守るために、我々一人ひとりが、アメリカの物語に登場する素晴らしいキャラクターのひとり、アティカス・フィンチの言葉に耳を傾けるべきです。彼は「相手の立場に立ってものを考え、相手の肌の色になって歩き回ってみるまでは、本当にその人のことを理解することはできない」と言っています。

黒人やその他のマイノリティの立場では、難民、移民、地方の貧困、トランスジェンダーなど、この国の多くの人々が抱える問題と、正義を追求する我々の努力とを結びつけて考えるべきです。中年白人でさえ、今の彼には何の不自由もないように見えるかもしれませんが、経済、文化、テクノロジーの変化によって彼自身の世界ががらりと変わってしまうのを目の当たりにしてきたのです。

アメリカの白人は、奴隷制度の影響や、黒人差別が60年代に突然消えてなくなった訳ではないことを理解する必要があります。マイノリティが不満の声を上げる時、それは単に彼らが反人種差別主義運動に参加したり、政治的な是正を求めたりしているだけではありません。平和的な抗議活動を起こす時、彼らは特別な待遇を求めているのではありません。彼らはただ、我が国の建国の祖たちが約束した平等な扱いを求めているだけなのです。

生粋のアメリカ人から見たアイルランド人、イタリア人、ポーランド人移民についてよく言われる「アメリカは新参者の移入で弱体化したりしなかった。彼らはこの国のやり方に従い、この国をむしろ強くした」という決まり文句は、今日でもほぼ一語一句当てはまります。
Translation by Smokva Tokyo

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