全文翻訳|オバマ大統領、最後のスピーチ

この秩序が今、特にイスラム教を利用した暴力的な狂信者たちによって脅かされています。自由貿易、オープンな民主主義、或いは市民社会そのものが自分の権力に対する脅威だとする海外の独裁者たちです。我々の民主主義を脅かすこれらの脅威は、車両爆弾やミサイルなどよりもさらに影響が大きいものなのです。これは変革に対する脅威でもあります。独裁者たちは異なる思想や信仰を持つ人々に対する脅威であり、国のリーダーに責任を追わせる法制度を無視し、自由な言論や思想を統制しています。彼らは、剣や銃や爆弾などの武器と、プロパガンダを実行する組織こそが、何が真実で何が正しいかを決めるのだと信じているのです。

この8年間、軍、情報機関、警察機関に従事する人々や、それらをサポートする外交官たちの並外れた勇気により、海外のテロ組織による我が国へのテロ攻撃計画はひとつも成功していません。ボストンやオーランドでの事件は急進化することの危険性を我々に教訓として残し、警察機関は以前より慎重かつ実践的に対応できるようになっています。我々はウサマ・ビン・ラディンをはじめ、1万人以上のテロリストを排除してきました。我々が主導する対イスラム国の有志連合は、イスラム国の指導者たちを排除し、占領地も半減させました。イスラム国は滅亡するでしょう。アメリカの脅威となる人間は無事ではいられないのです。対テロ作戦に従事している皆さん、あなたがたの最高司令官でいたれたことは一生の誇りです。

しかし我々の生活を守るために必要なのは、軍隊だけではありません。我々が恐怖に屈してしまう時、それは民主主義の崩壊です。我々国民一人ひとりが、外部からの攻撃に対して緊張感を持って対峙しなければなりません。そしてその際は、我々自身の核をなす大切な価値を下げないように注意する必要があります。そのため私はこの8年間、厳しい法的根拠に基づいて対テロ作戦を遂行してきました。我々は拷問行為を禁じ、グアンタナモ湾収容キャンプを閉鎖する方向で働きかけました。さらに、国民のプライバシーと市民の自由を守るための監視活動を管理する法整備を行いました。私は、イスラム教徒のアメリカ国民に対する差別を許しません。民主主義、人権、女性の権利、LGBTの権利を守り、広げるため、不十分な形であっても我々は世界各地での戦いから撤退することはできません。我々は、民主主義やさまざまな権利が侵害されるのを見過ごす訳にはいかないのです。過激思想や極端なセクト主義との戦いは、独裁主義や民族主義者による攻撃との戦いの一部です。法の支配を尊重する態度や自由の範囲が世界的に狭まったなら、国内や国家間の戦争の危険性が高まるでしょう。そしてついには我々の自由が脅かされることになるのです。

皆さん、緊張感を持ちましょう。しかし決して恐れる必要はありません。イスラム国は罪もない人々を殺害するでしょうが、アメリカを倒すことはできません。そのためにも憲法を遵守し、我々の信念を捨てずに戦わねばなりません。我々が信念を捨ててしまい、周辺の小国をいじめるただの大国に成り下がるようなことさえなければ、我々のライバルであるロシアや中国の世界に対する影響力は我々には及びません。

つまり、我々が民主主義を「当たり前のものだ」と思うたびに、我々の民主主義は脅かされているのです。政党にかかわらず我々全員は、民主主義の制度改革に全力を尽くすべきです。進歩的な民主主義国の中でも我々の投票率が低い時は、投票しやすくなるような工夫をすべきです。また、公的機関に対する信頼度が低い時は、政治とカネの関係を断って公共サービスの透明性と倫理観を高めるべきです。議会が機能不全に陥った時は、極論に走るのではなく、政治家が良識を持てるような選挙区制度を作るべきです。

Translation by Smokva Tokyo

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