誰の目にも触れないミック・ジャガーの失われた自叙伝

誰の目にも触れないミック・ジャガーの失われた自叙伝

ロンドンの出版社ジョン・ブレイク・パブリッシングは、1980年代初頭に書かれたミック・ジャガー自叙伝の唯一の原稿を保管している、と主張する。しかし、ローリング・ストーンズのマネジメント側はその出版を許可しないという。

「ミック・ジャガーが、これまで日の目を見ていない数十年前の自叙伝の中で、魅惑的なロックの生活や"心の内"をさらけ出している」と、ロンドンの出版社のジョン・ブレイクは語る。一方、ザ・ローリング・ストーンズのマネジメントはこの本の出版を許可しないという。ニューヨーク・タイムズ紙によると、バンドの代理人はこの自叙伝の内容について、肯定も否定もしていないという。

ブレイクがザ・スペクテイター誌に語った所によると、彼は7万5000ワード数に及ぶ原稿のハードコピーを所有しているという。「この原稿は"死海文書にも匹敵する"ほどの価値がある」とブレイクは主張している。ブレイクは、ジャガーがゴーストライターに自叙伝を書かせたとみており、3年前に"親しい友人"から、ジャガーによる手書きのメモも書き込まれた原稿を入手したという。

ブレイクは、興味をそそる一節を小出しにして世間の好奇心を煽ろうとしている。例えば、ジャガーがドラッグでハイになっている時に郊外の家を購入した話や、コンサート時の楽屋にバンドはキャビアやうずらの肉詰め料理を用意させていたが、ジャガーは決してそれらを口にしなかった、というようなエピソードを挙げている。「とても面白く惹き込まれる読み物」とブレイクは評している。「まるで、太ったエルヴィス・プレスリーがラス・ヴェガスで落ち目になっていく直前の日記を読んでいるようだ」。

ブレイクによると、ジャガーはこの自叙伝を1980年代初頭に執筆したが、出版社側に却下されたという。当時の自叙伝には衝撃的なスキャンダルは欠かせない要素であり、ジャガーの原稿には"セックスやドラッグ関連の話が弱い"とされた。

ブレイクは自叙伝の出版に関し、バンドのマネジャーであるジョイス・スミスを通じてジャガーにコンタクトしようとした。当初スミスは、ジャガーはこの自叙伝の存在を覚えておらず、コピーを送るよう伝えてきたという。その後スミスはこの自叙伝が本物であることを認め、「この自叙伝はジャガーのデビュー当時を描いたものである」とする序文をジャガー自身に書かせることができるかどうかを打診してきた、とブレイクは書いている。しかしそれから数ヵ月の間、ジャガーが多忙を極めたために、自叙伝出版のプロジェクトは一旦棚上げされた。その後ブレイクはスミスに対し繰り返し催促したが、2015年末までにスミスは、ブレイクによる自叙伝の出版を拒否した。

ニューヨーク・タイムズ紙に対する法的代理人を通じたコメントでスミスは、この原稿の存在は認めているようである。「ジョン・ブレイクは、自叙伝の出版許可を求めて時折私宛てに書簡を送ってきました。彼に対する回答は一貫して変わりません。その原稿はミック・ジャガーのものではないと本人も承知しており、出版は許可できせん。ジョン・ブレイクが主張している内容は、今後もしもミック自身が自叙伝を出版するとなった際に、明らかになることでしょう」。

ジャガーの代理人はローリングストーン誌の取材に対し、ニューヨーク・タイムズ紙へのスミスのコメントを引用して回答した。

ジャガーは当初、自叙伝の執筆に乗り気でなかった。「ロックンローラーの自叙伝の市場は飽和状態にある。1965年に俺が何をしていたか知りたいのなら、ウィキペディアでも読めばいい」と、ジャガーは2014年、ザ・ハリウッド・リポーター誌に語っている。

ブレイクは、ジャガーが原稿の権利を持っているため、バンドのマネジメントを出し抜いて出版することはできない、と語る。また、自叙伝の原稿は、ジャガーへ確認のために送った1部を除くと、ブレイクの所有するものがこの世で唯一のものだと主張している。

Translation by Smokva Tokyo

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