使命に生き、今を受け入れる。KEMURI伊藤ふみおのパンク精神

By TAKURO UENO
PHOTO:TERUMI FUKANO
再結成から約5年が経ち、スカパンクバンド・KEMURIがさらなる高みに達した。ヴォーカルの伊藤ふみお曰く、「信じれば叶うってことを重たく捉えすぎず、真に受けてやっている」という姿勢こそが、彼らが提唱するPMA(Positive Mental Atitude)の本質だろう。そう、いつだって彼らは真剣だ。2000年代、ほぼ毎年のように出演していたフジロック・フェスティバルのステージ、そして再結成後のAIR JAMのステージ、昨年のワールドツアーなど、国内・海外問わず、どんな場所でも「勝負」を挑んできたのだ。その成果が凝縮されたアルバム『FREEDOMOSH』を引っさげ、また新たなツアーに臨む彼ら。リハーサル真っ最中の伊藤に話を聞いた。

「ほとんどの人が使命感のようなものを持って仕事をしているわけだけど、その中から生まれてきた等身大の自分というやつが、そのうち自然と形になってくる」

KEMURIの通算12枚目となる最新アルバム『FREEDOMOSH』がリリースされた。このアルバムが凄いところは、冒頭から最後まで新鮮な気持ちで楽しく一気に聴けること。バック・トゥ・ザ・ルーツなスカパンクを軽快に鳴らしているが、それ以上に洗練されたフレーズやアレンジが随所にビシバシと冴え渡り、ここ数年の活動をフィードバックさせた2017年のKEMURIサウンドに仕上がった。一方、アートワークは1990年代後半のメロコアやスカパンクのレコード・ジャケットを思わせる雰囲気だし、昔からのファンを納得させる「秘伝の味」はやっぱり健在。「懐かしいけど、新しい」という感覚が絶妙なバランスでまとまった一枚と言える。

KEMURI再結成後、やっといいものができたという確信がある

─2015年にリリースされた前作『F』は結成20周年という節目で、KEMURIの集大成的サウンドを踏まえてバンドの次が示されていたと思うんです。今回のアルバムは自分たちの「型」をしっかり出しきっているというか、懐の深さもあるし、さらなる高みに自然と達した感じがしました。

伊藤ふみお(以下、伊藤):20周年という節目に合わせて『F』を作ってからの2年間、自分たちのツアーをやったり、アメリカからバンドを呼んだり、いろんなことがあって、その真ん中に『F』というアルバムがあった。2016年はアメリカやイギリスでライブをして、海外にチャレンジすることがテーマで。そういった複雑な思考回路の中、自然と「次はもっといいアルバムを作ろう」という気持ちになったんだと思う。一連の活動で気づいたそれぞれの音楽愛が「KEMURI愛」に昇華していって、いろんな断片を寄せ集めて出来上がったアルバムが『FREEDOMOSH』です。当然、これまで以上に腹をくくった感はあるかもしれない。

─再結成して5年目となり、バンド内の雰囲気も良くなってきているんじゃないですか。

伊藤:やっとだなぁ、なんかバンドらしくなってきたと感じるのは。この5年間は同じ7人のメンバーだからね。スカパンクのバンドってギターやベース以外にホーンも入るから人数が多くて、それが理由ってわけではないけど、古今東西のスカパンク・バンドはメンバーチェンジが多いという宿命があるんです。我々にしてもファースト・アルバムとセカンド・アルバムでガラッとメンバーが変わってるし、サード・アルバムでまたメンバーチェンジがあったりとか。それを考えると、同じメンバーというのはすごく嬉しいよ。

─ギターとベースの強靭なバッキング、ホーン隊の流れるような旋律、エネルギッシュなヴォーカル。最強のコンビネーションですね。もちろん『F』もいいアルバムだということに変わりはないですけど、今回の『FREEDOMOSH』は強さが際立ってるなと。

伊藤:前作に比べてメンバーがお互いに向き合ってる感じはあるし、もっといいものを作ってやるという気持ちが高まってると思う。バンドとして上昇気流に乗って、右肩上がりのいい雰囲気の今があるから。まあ、すぐにやろうと思ってできることばかりじゃないからね。再結成してから、これだけの時間かけてやっと作れたものというか、いいものができたぞという確信があるし、それはいいことだと思う。

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