a flood of circle佐々木亮介インタヴュー(後編)|21世紀の音楽に必要なのは、境界を飛び越えていく力

By Joe Yokomizo
年始にニューアルバム『NEW TRIBE』をリリースした、a flood of circleのフロントマン佐々木亮介。
10周年の総決算として年始にニューアルバム『NEW TRIBE』をリリースしたa flood of circleのフロントマン、佐々木亮介のインタヴュー後編。

前編で"音楽の力"というキーワードから現代の音楽の在り方について語ってくれたその続きは、さらにその先の未来を見据える。理想に反して壁や境界がどんどん作られていく中で、音楽が担っていくべきものとは。

前編はこちら

―それでも、現実を見るとトランプの当選によって多くのアメリカ人は壁を作ることを指示し、移民を受け入れることでノーボーダーの世界を拒否したわけですよね。これはジョン・レノンが『イマジン』で歌った世界とは真逆なわけで。イギリスではブレグジットが起き、日本だってAI(人工知能)が発達して人間の仕事が奪われることになれば、排外主義がのさばると思う。ロックは理想を歌っていて欲しいけど、そうした時代の頭が見えてきている中で、ポスト・インターネット世代は何を歌うべきなのか? と思うんです。

清志郎さんとかもそうでしたけど、ロックって預言っぽいところがあるじゃないですか(笑)。きっとジョンも預言のつもりで"国境なくなれ"と書いていたと思うんです。とは言え、難しいですよね。そこで音楽ができることで具体的なことは、何もないです。ただそれを歌うことで、気づいてもらうしかない。そういう理想論を言っていると"あいつお花畑だ"とか言われるけど(笑)。

―じゃあ、音楽の力ではこの先何も変わらない?

アメリカもイギリスもいろんな国、いろんな血の人が混ざっているわけでしょ。例えば、イギリスはイギリス人以外にもトルコ人とかインド人とか白人じゃない人が山ほど住んでいて、みんなイギリスの国籍を持っていたりする。だとすると、その人が何人(なにじん)かを決める判断って、すごくあやふやじゃないですか。何の答えもない発言になりますけど、俺は誰が何人だとか、なくていいと思います。そういうのを持てば持つほど殺し合いになるから。極端な話、アイデンティティだってなくてもいいと思うほどで、もっといろんな価値観が混ざる方向に行けばいいのにと思いますね。さっきも言ったようにロックとはいろんなジャンルを混ぜた音楽で、全然違う価値観の人たちが一緒にいる方法を探すことの象徴がロックなんだと思う。やっぱりお花畑かもしれないけど、音楽というのは世界における理想の形の預言みたいなものなんですよ。だって全く混ざらないと思っていたものが混ざる瞬間を音楽は見せられるし、作れるんだから。それが世界を変えるかどうかはわからないけど、やらないと変わらない。そこに俺は音楽の可能性を感じています。

―漫画家のいがらしみきおさんの作品『誰でもないところからの眺め』のあとがきで、哲学や脳科学の世界では"私"なんてものはないというのが趨勢だと書いてありました。今の佐々木さんの話を聞いていて、ロックというのは"私"という境界のない、ボーダレスな部分でこそ響くものなのかなぁって。

ジョンの『イマジン』って、歌詞は英語だけど世界中の誰が聴いてもいいと思えるんですよね。そういう曲が今の時代にもあって欲しいと思う。このまま境界を増やしていく世界がいいとは思えないんですよ。それこそ、いがらしみきおさんの『ぼのぼの』の台詞で"犬と猫は飼うけど牛と豚は食う"みたいなのがあって、線を引くって一体何なんだ? と。少なくとも人間はみんな等しく人間だというところは絶対で、何人(なにじん)だったら阻害していいとか殺していいということは絶対にないはず。

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