7位 ラナ・デル・レイ『ラスト・フォー・ライフ』
アルバム『ラスト・フォー・ライフ』のオープニング曲「LOVE」。フィル・スペクターとアトランタ・トラップの間に広がる大きな溝を埋めるようなベースが響くと、ラナ・デル・レイは「過去の一部 でも今のあなたは未来」と歌う。彼女の5枚目のアルバムは、一聴すると心地良い日暮れの雲の上を漂うお馴染みの雰囲気の音楽に聞こえるため、収録曲の大胆なまでに独創的な本質を見落としてしまいがちだ。まるでスマホの連絡帳をスクロールするように、ラナは摩訶不思議なキャラクターをシャッフルして身にまとう。歌詞はイギー・ポップ、パッツィー・クライン、ブライアン・ウィルソン、レッド・ツェッペリンを想い起こさせる。参加ゲストはウィークエンド、スティーヴィー・ニックス、エイサップ・ロッキー、ショーン・レノンなど。“異常”という我々の新たな“正常”の無力さを呼び覚ますために彼女は何でもやる。「ホエン・ザ・ワールド・ワズ・アット・ウォー・ウィ・ケプト・ダンシング」では「これは一つの時代の終わりなの? これがアメリカの終焉?」「いいえ、これは始まりにすぎない」とソフトに語りかけるように歌う。恐ろしいことに、彼女のこの歌詞の示すところが今年アメリカで作られたすべての曲に通じるのも真実だ。
6位 パラモア『アフター・ラフター』
パラモア特有のハイテンションなフックと聞く者の自信や気力を萎えさせる歌詞が、『アフター・ラフター』では蛍光塗料のような鮮やかさをもって炸裂している。絶望へと横滑りしながら落ちていく様子を事細かに描写しつつ、ポップス界随一の躁病患者の理想像を描き出そうとしているかのようだ。意気消沈しつつもダンサブルな「ハード・タイムス」、ミラーイメージ的でアシッドなシンセポップ「ローズ・カラード・ボーイ」、悲痛なほど巧妙なストリングス・バラッドの「26」で分裂気味の躁状態になり、ここにハイライフ調のギタートーンとゆらゆら揺れるカウンターメロディーが加わって、オーバーヒートした空気感を作っている。ヘイリー・ウィリアムスのいつも通りのパワフルで率直なパフォーマンスは、優しく囁く歌声にも、子供っぽくはしゃぐような歌声にも、等しく説得力を持たせている。彼女の虚勢のおかげで『アフター・ラフター』が外界に疲れた彼女の子細な記録だということを忘れてしまうほどだ。
5位 ハリー・スタイルズ『ハリー・スタイルズ』
ワン・ダイレクションでの輝かしい活動を考えると、ハリー・スタイルズなら、望めばどんなことでもできたはずだ。ソロになるという大きな変化を迎えた彼には、豪華絢爛なラジオ・ポップ曲を歌うことも、セレブをゲストに迎えることも、有名プロデューサーを好きに選ぶこともできただろう。しかし、スタイルズはロックスターという肩書を賭けて、70年代スタイルのギター・グルーヴを持つ素晴らしいアルバムを作ることにしたのである。深奥なアコースティック・バラッドの「スウィート・クリーチャー」「エヴァー・シンス・ニュー・ヨーク」、オアシス的側面を前面に出した「キウイ」、自身の愛したミューズとの別れの悲しみを、コズミックメンターのスティーヴィー・ニックスを援用しつつ歌った「ツー・ゴースツ」。世間に認めてもらいたいという余計な必死さもなく、ワン・ダイレクション時代の活力と自信を失うことのない彼は、ソロに転向した他のボーイズグループ出身シンガーとは一線を画している。さらなる躍進が期待されるこの男から目を離してはいけない。
Translated by Miki Nakayama / Edit by Toshiya Oguma