当事者たちの本音に迫った「最後のジェダイ」制作密着ルポ

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から。デイジー・リドリー演じるレイ(JONATHAN OLLEY/© 2017 LUCASFILM LTD)

2018年に入り、スピンオフ作となる『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の発表、また新シリーズの脚本とプロデュースを「ゲーム・オブ・スローンズ」のクリエイターが担当することになるなど、スター・ウォーズの世界は変わらず広がり続けている。この記事は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の昨年公開前に監督とキャストに密着取材を行ったもの。真価が試されるSWのこれからを読み解くテキストの一つになるはずだ。

前作から2年、ディレクターとキャストが明かす新たな物語の背景

小学生の頃、その少年は宇宙船の模型を手に取った。カノン砲や着陸装置、銀河系を模した小さなチェステーブル等を、彼は説明書を片手に一つずつ組み立てていった。ほどなくして、ライアン・ジョンソンはミレニアム・ファルコンの模型を完成させる。「完成させてすぐ、僕はそれを宙に投げた。部屋の中を飛び回る姿を想像してね」。当時を振り返りながら、彼は苦笑いを浮かべてこう語る。「あっけなく墜落してしまったよ」

のちに映画学校を卒業したジョンソンは、興味深いトリックに満ちた2012年発表のサイエンス・フィクション『LOOPER/ルーパー』をはじめ、魅力的な作品を数多く手がけてきた。間もなく44歳を迎える彼だが、フォーマル調のパリッとした半袖ボタンダウンシャツに身を包んでいても、どこかあどけない頬と品のある立ち居振る舞いは、少年時代の面影を色濃く残している(それを隠すために、彼は剃ったばかりのあごひげをまた伸ばそうとしているのかもしれない)。10月下旬、彼が過去何カ月もの間入り浸っているディズニーのバーバンクスタジオにあるオフィスには、「我々は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を製作している(肝に銘じておくように)」と書かれたホワイトボードがある。同作の脚本と監督を務め、幼少期に慣れ親しんだおもちゃの実物コレクションに囲まれた日々を過ごす彼は、実寸大のミレニアム・ファルコンのセットに足を踏み入れたときには涙を流しそうになったという。彼のアプローチには敬意と遊び心がうまく散りばめられており、出演者たちは皆驚かされてばかりだと口を揃える。「予定調和じゃつまらないからね」。いたずらっ子のような笑みを浮かべて、彼はそう話す。

一方、現実の世界では何もかもが破綻してしまっている。続三部作の1作目となった2015年作『フォースの覚醒』の公開から数カ月が経った頃、世界はまるで不注意な子供が文明そのものを鷲掴みにし、宙に放り投げたかのような混乱の最中にあった。CGに頼り切ってしまっていた頃のジョージ・ルーカスでさえも、あまりにグロテスクで非現実的すぎると却下したであろうキャラクターが舵を取るこの国が「帝国」そのものであることを、そのとき多くの人々が悟ったのだった。


アダム・ドライバー (カイロ・レン)、デイジー・リドリー (レイ)、マーク・ハミル(ルーク・スカイウォーカー) photo by Bruno Dayan © 2017 Lucas lm Ltd. All rights reserved.  

旧三部作がルーカスのベトナム戦争についての見解を反映していたこと、そして新三部作が民主主義の欠点を浮かび上がらせたことを考えれば、『スター・ウォーズ』が現在の世界の様相を予知していたと考えても不思議ではない。J・J・エイブラムスが監督を務めた『フォースの覚醒』では、『意志の勝利』を彷彿とさせるような、何十年も前に消滅したはずのイデオロギーを掲げる軍事組織、ファースト・オーダーが猛威を振るう。政府が壊滅的状況にあるなか、残された希望はごく少数の勇敢な人々が率いるレジスタンスだった。その舞台設定が、現在の世界の状況と類似していると感じる人は少なくないだろう。

「今の社会情勢を反映している部分はあると思うわ」。物語における新たなスター、レイを演じるデイジー・リドリーはそう話す。無名だったロンドン出身の彼女は、砂漠で廃品を漁っていたレイが次なるジェダイへと変身を遂げたように、瞬く間に映画界のスターダムにのし上がった。「でも現実逃避としての面も備わっていると思う。だって人々がレーザーとかから逃げまどうわけだもの。そういう2つの異なる面が、ちょうどいいバランスで共存しているの」

 「世界が悪い方向に進めば進むほど、人々は銀河系の彼方における物語を求めると思うの」。ストームトルーパーたちを束ねるキャプテン・ファズマを演じるグウェンドリン・クリスティーはそう話す。(彼女は『ゲーム・オブ・スローンズ』におけるタースのブライエニー役としても知られる)。「世界が試練に直面しているとき、人々がアートに救いを求めるのは自然なこと。今は誰もがそういうものを必要としていて、実際にそれが人々を愛で結びつけていると思う」

Translated by Masaaki Yoshida

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