ビートルズのインド訪問50周年、あなたが知らない16の歴史的トリビア

15. マハリシに対する告訴理由は今でもミステリーのままだ。

ビートルズがインドを訪れてから50年経つというのに、ハリソンとレノンが僧院を去る原因となったマハリシとその周囲への疑惑は、これまで一度も公式に説明や会見が行われていない。報道によると、マハリシは女性信奉者の一人に性的な違法行為をはたらいたとなっていて、この疑惑を拡散したのはアレックス“マジック・アレック”マーダスと言われている(マーダスは2017年に他界しているが、ニューヨーク・タイムズ紙に出した声明文で「ある晩、マハリシのビラの窓を見たら、教師をハグしているグルが見えた。その光景に自分もハリソンもレノンも不快になった」と述べている)。その結果、レノンがマハリシを最も強烈に口撃し、「セクシー・セディ―」という曲まで作っている。ちなみに、この曲のオリジナル・タイトルは「マハリシ」だった。

『ビートルズ・アンソロジー』によると、レノンは「マハリシに『僕たちはここを去る』と言ったんだ。彼は『どうしてだ?』と聞いてきた。僕は『あなたは宇宙とつながっているのだから、その理由もわかるはずだ』と言って、『あなたは分別があるはずだ』と繰り返し言い続けた。そしたら、彼は『ぶっ殺す、このゲス野郎』的な目で僕を見た」と語っていたという。シンシア・レノンは『ジョン・レノンに恋して』の中で、レノンが彼女にマハリシへの幻想が打ち砕かれたこと、さらに「あのヨギの頭の中は知名度を上げること、セレブリティ、金しかない」と言っていたと述べている。

報道によると、マハリシに対して性的な違法行為での告訴は行われていない。当時の参加者の中にはマハリシが何か不適切な言動をしたのかもしれないと考える者もいた。またハリソンとマッカートニーは1990年代にマハリシに謝罪している。ハリソンが後に『ビートルズ・アンソロジー』で語ったところによると、この噂の原因はマハリシに対する嫉妬心だったらしい。曰く「くだらない話があっという間に完成したのさ……あそこには奇人変人がたくさんいた。ほんと、あそこは変わり者でいっぱいだったんだ。もちろん、俺たちもその中の一人だったよ」

ハリソンの最初の妻パティー・ボイドは自身の回顧録で「あの疑惑はレノンがヨーコ・オノに会いに行くための言い訳として作られたたのかもしれない」と述べている。もう一人、この噂を疑っているのがマイク・ラヴだ。『Good Vibrations』でこう述べている。「マハリシは自分のムーヴメントを世界に広げるためにビートルズとビーチ・ボーイズを熱望していた。また、彼は生涯に渡って献身的な女性信奉者に囲まれていた。それなのに、彼が性的な違法行為で訴えられたのはビートルズがあの僧院に滞在した時ただ一度だろう? それって変じゃないか」

そんな危機があっても、マハリシは超越瞑想のムーヴメントを広め続けた。また、ニューヨーク・タイムズ紙によると、老齢期に入った彼はビートルズの話を拒否するようになったという。マハリシは2008年に90歳で他界している。

16.当時の僧院は現在、観光地となっている。

1970年代にリシーケシのマハリシの僧院は空き家となり、30年以上、見捨てられていた。そのため、残っている建物もあるとは言え、多くの建物が朽ち果てた。2003年に地元の役所の林業担当部署がこの場所を引き受けて、12年後に観光地として再オープンした。2012年に当局によって閉鎖されるまで、僧院の壁はアート・プロジェクトの一環としてペイントが施されていた。僧院の壁のペイントを行ったストリート・アーティストのパン・トリニティ・ダスがCNNに次のように語った。「この土地は伝説たちが歩いた場所で、それを記念したいという人が明らかに多い。だからこの空間に足を踏み入れた人のほぼ全員が、この歴史的に意味のある素晴らしい場所が廃墟と化していたことに唖然とするんだよ」

将来的なリノベーションに加えて、僧院の中にビートルズ・ミュージアムを作る計画も出ている。ただし、これは役所の林業担当部署からこの土地を取り戻せる場合にのみ実現可能だ。観光業関係者のミーナクシ・サンドラムが「それが実現すれば、リシーケシに外国人観光客をもっと呼び寄せることができます」と付け加えた。

Translated by Miki Nakayama

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