もふくちゃんが語る、プロデューサー目線で見た今どきのバンドとアイドル

「アイドルの音楽だと、私が一番大事にしているのは声なんです」

─でんぱ組.incも曲の強烈さで最初注目を集めたところはありますよね。「なんなんだこの曲は?」って。

もふくちゃん:例えば、アイドルのエッセンスをうまく切り取って曲にしたヒャダインさんのようなクリエイターさんが出てきた頃、こんなことをアイドルに歌わせたら面白いんじゃないかとか、その新しさって発見だったと思うんですよね。それに近い発明みたいなものが、バンドにもあったらいいのかもなって漠然と感じました。ある意味、バンドだとよりロックだなんだと、ジャンルに縛られて見られがちなのかなと。その点、アイドルは曲ごとに作曲家も変えられるから、いろんな面を見せることができる。でもバンドだと作曲家も楽器も限られるから、その中でどういうふうに多様性を見せてくのか、それぞれに工夫しているんだなと今回思いました。

やっぱり売れてるバンドはそういうところをしっかり押さえている気がするんです。こんなタイプの曲もやるんだとか、これまでのメロディを上回るメロディが来たとか、多様性とキャッチーさですよね。そういうエンタメ性みたいなものを持ってるバンドが、若い子たちの中からもっと出てくるといいなと思いました。音楽の土台はすごくしっかりしてるんです。あとはどこを磨くかっていうことなんだけど、そういう手引きをプロデューサーやレコード会社の人がしてくれると面白くなりそうなバンドは、何組かいました。

ーなるほど。確かに「どこを磨くか?」っていう狙いが絞られていた方が、音楽的な方向性も見えやすくなりますね。

もふくちゃん:アイドルの音楽だと、私が実は一番大事にしているのは声なんです。例えば、でんぱ組.incの「でんでんぱっしょん」は、Fear, and Loathing in Las Vegasみたいな曲をアイドルが歌ってみたらめちゃくちゃ面白いかもっていうアイデアがあって、つまり声とオケの組み合わせですよね。で、Wiennersの曲を当時私が聴いていて、「これ女性ヴォーカルだったら面白そう」というのがあったから、玉屋さん(玉屋2060%)に作曲をお願いしたんです。「このサウンドだったらヘタウマな女の子の声で再生したらすごく合うな」とか、いつも仕事のときはそういう想像をしながらバンドの曲を聴いてますね。どうやったら声が主役になりえるのかっていう。

私がお仕事をお願いするのはバンドの人も多いので、そういうオファーは理解してもらいやすいです。ただ、現場では遠慮されることもあって。「アイドルだから、低音はここまでにしておいた方がいいですよ」とか。いや、そういうのはすべて無視してください、歪むくらいやりましょう!と言うくらいエクストリームなオケを作っておくと、不思議なことにアイドルの声の主役感が増すんですよね。そもそもの取り合わせがヘンだから、両方浮いて聴こえるしケンカしない。

ー面白いですね。ライブはどのように考えてたんですか? でんぱ組.incも今はバンド編成でライブをすることも多いですが。

もふくちゃん:ロックフェスにも出るようになって、そういうときにオケだと弱いなというのはずっと感じていて。現プロデューサーの高瀬さんが、ずっとバンドでやりたいということで比較的初期からバンドでのライブは意識してやっていました。よし、これでZEPPで対バンしたときに勝てるぞ!みたいな(笑)。あと、昔からずっと「圧で勝つぞ!」というのはあって。例えば、アイドルイベントで何組も出るようなステージのときに、「さっきのグループ、音圧が凄かったな」とか、謎の圧があった方がお客さんの印象に残るかもしれないと思って、ライブで使う音源のマスタリングのレベルを思いっきり上げたり、そういう工夫は最初からやってました。

アイドルの魅力の一つは、とても自由なところだと思うんです。ヴォーカルが一人だけだと、その子の歌に頼らなきゃいけないところもあるけど、何人か歌い手がいて、その子たちのいいところを凝縮させれば、ユニゾンの面白さも表現できるし、ソロで聴かせることもできる。それってバンドにはない魅力な気がします。

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