ボブ・ディラン、ケシャ等が参加、LGBTQラブソング集として歌詞を書き換え再録

LGBTQラブソング集として歌詞を書き換え再録した、コンピレーションEP『Universal Love(原題)』に参加した、ボブ・ディランとケシャ (Photo by Jeffrey R. Staab/CBS ,Andrew Lipovsky/NBC/NBCU Photo Bank via Getty Images)

ウェディング・ソングやラヴソングで歌われているジェンダーを現代風に構成し直して、LGBTQコミュニティも歌詞に反映しようとする画期的なプロジェクトがスタートした。一番に参加を決めたボブ・ディランをはじめケシャやセイント・ヴィンセント、ベン・ギバード等も参加した、コンピレーションEP『Universal Love(原題)』が発売される。

「従姉妹と彼女のガールフレンドが1年半くらい前に結婚したの」と、シンガーのヴァレリー・ジューンが強烈なテネシー訛りで教えてくれた。「結婚式では、みんな何時間も踊り続けて、汗だくで、シャンペンをがぶ飲みしていたわ。でも、音楽を聞いているうちにふっと思ったの。従姉妹とその妻のための曲がないって。どの曲も、女なら相手は夫か彼氏、男なら相手は妻か彼女について歌っているわけ。だから私は『そうよ、彼女たちの曲も必要だわ』って思ったのよ」と。

ジューンはダイナ・ワシントンが1950年初頭にヒットさせた「マッド・アバウト・ザ・ボーイ」をレコーデイングした。オリジナル曲と同じ映画のようなセンチメントとパワーはそのままに、歌詞を「マッド・アバウト・ザ・ガール」という内容に書き換えたのである。これは新EP『Universal Love』に収録されている6曲のうちの1曲だ。ウェディング・ソングやラヴソングで歌われているジェンダーを現代風に構成し直して、LGBTQコミュニティも歌詞に反映しようとする画期的なコンピレーションである。ジューン以外の同EPの参加アーティストはボブ・ディラン、ケシャ、セイント・ヴィンセント、デス・キャブ・フォー・キューティーのベン・ギバード、ブロック・パーティーのフロントマン、ケリー・オケレケ。そして、米ラスベガスのMGMリゾート・インターナショナルが新たなマーケティング戦略の一環として、このEPをコンパイルした。

「愛と結婚の定義が変化して、包摂される恋愛関係のスタイルが増えているのであれば、ラヴソングもそろそろその事実に追いつく時期にきているのではないか」と、このコンピレーションEPのエグゼクティヴ・プロデューサーを務めた米広告代理店マッキャンの主任クリエイティヴ・オフィサー、トム・マーフィーが言う。「MGMリゾートの新たな広告キャンペーンのテーマは『ショーへようこそ』で、今年スタートした。このキャンペーン中にTVコマーシャルで表示するコピーは『我々は人類を楽しませるためにMGMを開発した』で、このコピーをコマーシャルで流す言葉を超えた、実体のあるものしたかった。そこで、このキャンペーン中にエンターテイメントを文字通り包摂的にする世界的なアクションを起こそうと考えたわけだよ。そこから、このコンピレーションのアイデアが生まれたんだ」と、説明してくれた。

これはMGMのブランド精神とぴったり合致するメッセージだった。「MGMでは平等を政治的な課題だとは考えておらず、それよりも自社文化の基盤に重きを置いています」とMGMの主任エクスペリエンス&マーケティング・オフィサー、リリアン・トモヴィックが述べた。

このコンセプトを念頭に置いて、マーフィーと彼のチームは、このプロジェクトにユニークな演奏を提供してくれるであろうアーティストたちにコンタクトし、楽曲リストを送り、一番心に響く曲を選ぶように頼んだ。セイント・ヴィンセントはクリスタルズの「ゼン・ヒー・キッスト・ミー」を選び、エレクトロ・ロック調にアレンジした「アンド・ゼン・シー・キッスト・ミー」としてレコーディングした。オケレケはテンプテーションズの「マイ・ガール」を「マイ・ガイ」に変えて演奏し、ギバードはビートルズの「アンド・アイ・ラヴ・ハー」を曲も歌詞も原曲通りに演奏した。

数人のアーティストは楽曲リスト以外の自分の好きな曲を選曲した。マーフィーによると、プロジェクトの話を持ちかけたアーティストの中で一番に参加を決めたボブ・ディランは、「シーズ・ファニー・ザット・ウェイ(She’s Funny That Way)」を作り替えることにしたという。これは1930年の映画『Gems of M-G-M(原題)』のために作られた曲で、もともとは「I’m Funny That Way」という歌詞だった。ディランはこれをフランク・シナトラ風の「ヒーズ・ファニー・ザット・ウェイ(He’s Funny That Way)」にアレンジした。この男性版の歌詞はもともとビリー・ホリデイが歌って大ヒットしたものである。ケシャはビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーの1968年のアルバム『チープ・スリルズ』収録の「アイ・ニード・ア・マン・トゥ・ラヴ」を選曲した。これはマーフィーたちが気づかなかった曲で、「我々が選んだ曲はウェディングやファースト・ダンスの曲だったが、ケシャは新婚初夜の曲を選んだ」とマーフィーが説明した。

Translated by Miki Nakayama

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