プリンセス・ノキアのEmo Trapの新解釈、オウテカの超絶セッションなど、ストリーミングで楽しむ10作品

6:ジョン・プライン『The Tree of Forgiveness』
10年以上前にリリースされたプラインのオリジナル曲ばかりを集めたファースト・アルバムを、「プラインの飾り気のないテノールの歌声が、冬場の長い廊下の敷板を踏んだときのようにきしむ」とウィル・ハーミーズが評する。「彼の声は“Summer’s End”の切なさを増幅させ、喪失という雰囲気が漂う中で成人した子供を自宅の温かく招き入れる。これは長年プラインと共に曲作りを行っているパット・マクラフリンとの共作だ。階級意識を(「夜遅くに君は連中を目撃する/きらびやかな宝石を身にまとったやつらを」と)歌う「Caravan of Fools」では、彼の声ならではの乾いた重々しさが加わる。そして、死の瞑想を歌った「When I Get To Heaven」には効果的なフレーズ、甘美なセンチメント、ぼんやりとした孤独感が混在する。
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7:ジュリアナ・ハットフィールド『Juliana Hatfield Sings Olivia Newton-John』
ポップス界のスーパーノヴァ、オリビア・ニュートン・ジョンも、オルタナポップスのヒロイン、ジュリアナ・ハットフィールドも、共に魅力的なソプラノ・ボイスの持ち主だ。この作品では、ニュートン・ジョンの大ヒット曲がグランジ的感性を帯びたハットフィールドの歌声で再現されている。そして、ハットフィールドがニュートン・ジョンのオリジナル曲に深い愛着を持っていることが端々に見て取れる。70年代後半のスマッシュヒット「恋は魔術師[マジシャン](原題:A Little More Love)」でのハットフィールドの控えめなヴォーカル、映画『グリース』の挿入歌「愛すれど悲し(原題:Hopelessly Devoted to You)」での思いのこもったボーカルが本作のハイライトだろう。
評:モーラ・ジョンストン
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8:ザ・ニルス・クライン 4『Currents, Constellations』
ニルス・クラインが2016年にブルーノートからリリースした『Lovers』はコンセプチュアルなアルバムで、50年代のムード・ミュージックを室内楽団と共に奏でたものだった。ブルーノートでの2作目となる今作で、クラインは慣れ親しんだ遊び場に戻ってきた。そこは、彼が何年間も追求し続けている少人数のジャズ・グループで奏でる生々しくもスウィングするサウンドだ。メンバーは、即興演奏の凄腕リズム隊、スコット・コリー(ベース)とトム・レイニー(ドラム)、そしてジュリアン・レイジ(ギター)。ツイスト風の「Swing Ghost ‘59」やラーガ風の「River Mouth (Part1&2)」などのクラインのオリジナル曲は、単なるジャム・セッションではなく、野心的な組曲の様相を呈している。
評:ハンク・シュティーマー
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9:ミスター・フィンガーズ『Cerebral Hemispheres』
ミスター・フィンガーズことラリー・ハードは1986年にシカゴ・ハウス/ディープ・ハウスの先駆者となった。彼がリリースした「Can You Feel It」は、反復するリズムの中で聴こえてくるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアのスローガンが恍惚感を煽っていた。それから10年強ぶりの新作となる今作では、前作よりも広大になった音楽風景の中で、かつてのステージネームを復活させた。ソウル、フュージョン、好色なテクノ、おしゃれなブティックホテルのロビーで流れるダウンテンポな音楽、様々なスタイルのハウスと、ありとあらゆるスタイルが存在感を示しながら、ゾクゾクする官能さを醸している。自宅で行うダンスパーティのチルアウトにオススメの1枚だ。
評:ウィル・ハーミーズ
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10:L.A. サラーミ『The City of Bootmakers』
イギリスの吟遊詩人、ルックマン・アデクンル・サラーミの2枚目は、甘くまとわりつくフックで世の中に蔓延する病の物語を紡いでいる。「Generation L(ost)」はペイヴメント的であり、「ハンド・イン・マイ・ポケット」(アラニス・モリセット)的でもあり、サラーミ自身の内側にある矛盾をこき下ろしながら、ファズのかかったギター・サウンドと組み合わせている。そして、激しく高鳴る軽快なピアノと、甘酸っぱい“恋は盲目”的な歌詞が失恋ストーリー「You’re Better Off Alone」に息吹を与えるのだ。
評:モーラ・ジョンストン
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Translated by Miki Nakayama

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