Spotify、さらなる無料配信提供も音楽業界から反発必至となるか

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デジタル音楽配信サービスのSpotifyが、プレミアム特典の一部を無料ユーザーに提供する新サービスを開始する。ユーザーは歓喜するだろうが、音楽業界の反発は必至だ。

批判などどこ吹く風のSpotifyは、無料配信音楽枠を従来の2倍にすることに決めた。4月初旬に計画を公表して以来初の大きな動きとして、4月24日、同社はモバイル用アプリの新バージョンを公開した。このアプリでは無料ユーザーであっても特定のプレミアム特典のロックを解除できるようになっている。無料ユーザーは広告収入によってまかなわれるユーザー層で、モバイル用アプリを使っている場合は、これまでシャッフルで楽曲を聴くことしかできなかった。しかし、今後は約750曲のオンデマンド聴取が可能になる。この楽曲はディスカバリー・ウィークリー、デイリー・ミックス、トゥデイズ・トップ・ヒッツといった個別のディスカバリー・プレイリスト15種類で配信されるコンテンツだ。同社によると、今回無料で配信されることが決まった楽曲に関しては、レコード会社との話し合い後に新契約を取り交わしたという。

米ニューヨークのグラマシー・シアターで行われたサービスの改善と新サービスを発表したプレスイベントで、研究開発部最高責任者グスタフ・ソーダーストロムは、Spotifyが音楽業界へ提供しようとしていることは1990年代にラジオ放送が行っていたことと同じであると述べた。すなわち、それは最初に音楽を無料配布することで人々の購買意欲を刺激することである。

Spotifyを利用する9,000万人の無料ユーザーは当然喜ぶだろが、それ以外にとってはそれほど喜ばしいことではないだろう。Apple Musicのジミー・アイオヴィンもその一人で、何年も前から無料で音楽を配布することに疑問を呈してきた。最近ではストリーミング・サービスにとっての無料配信は「甚だ大きな問題」と呼んでいる。また、音楽業界もレコード産業に対するSpotifyの楽観的なビジョンを渋々了承している状況だ。無料ユーザーの多くがいずれは有料のプレミアム・ユーザーになることをSpotifyは保証しているが、アーティストもレコード・レーベルも懐疑的である。それどころか、音楽の無料配信からの雀の涙ほどの印税では、問題山積みの音楽業界の早期の復興は望めないと不安を募らせている。

しかし、最初に音楽業界の復興を主導したのはSpotifyに代表されるデジタル配信だったことも事実だ。近年のデジタル配信ブームのおかげで、音楽業界は20年間のスランプからやっと脱出できた。アメリカの2017年の音楽総収益は87億ドル(約9,400億円)で、対前年比17%の増加となり、2008年頃の収益まで盛り返した。

公開会社として最初の収益報告書の公開が来る5月2日に予定されているSpotifyは、音楽配信プラットフォームを超えた夢の実現を目指し始めたようだ。4月24日のプレスイベントでは、モバイル・データ使用システムの改善、ユーザー・パーソナライズ機能の強化、「自動運転プレイリスト」と呼ばれる機能なども発表された。この自動運転プレイリストは、ユーザーがインプットした音楽を自動的にプレイリストに加える機能となるらしい。ソーダーストロムは「我々は音楽業界の研究開発部門になりたい。これまで音楽業界にそういった部門はなかったと思うが、我々がそれを行うのである」と宣言した。

Translated by Miki Nakayama

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