全米1位がほぼ確実なBTS新作、ソングライターとプロデューサーが制作の裏側を明かす

BTSと作業を行ったライターやプロデューサーたちに取材すると、BTSの制作プロセスが垣間見える(とはいえ、彼らのコラボレーションには秘密厳守の部分も確実にあり、事実「余計なことを言うと大変なトラブルに巻き込まれる気がする」と返事してきたソングライターもいた)。K-Popレーベルの中には有名ソングライターを招いて一気に大量の楽曲を作らせる会社もある。例えば、ステレオタイプスのジョナサン・イップ。彼はSMエンターテインメントに招かれて韓国に行ったとき、毎日4曲作っていたと言う。一方、BTSのコラボレーションの多くは遠隔操作で行われる。BTSが既に完成しているインストゥルメンタル曲をもらうこともあり、スチュワートの「BTS Cypher Pt. 4」のビート、DJスウィベルがもともとCandace Sosaのために書いた「Euphoria」などがそうだ。BTSが作った楽曲はほぼ未加工のままで、DJスウィベルが「ポストコーラス部分の“ヘイ、イエイ、エー、イエイ、エー、イエイ”」と呼ぶものが加えられている程度らしい。

しかし『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』では、BTSは自作のトラックをDJスウィベルに送ることにして、彼が受け取ったトラックをヴォーカル・メロディの原型として使ったと言う(これはトップライニングという特殊な作曲技法で、事前に作られたマテリアルを基礎にヴォーカル・パートを作る方法だ)。そうやって作られた曲の一つが「Love Maze」で、90年代のラップとR&Bの要素を巧妙に抽出している曲だ。これ以外だと「Magic Shop」がそうだ。これにはチェインスモーカーズへのオマージュがあからさまに見えるシンセ・パートが入っている。チェインスモーカーズと大々的に作業を行ってきたDJスウィベルだからこそ、BTSの新作でも大きな役割を演じる資格が十分にあったのだろう。彼はスカイプでSosaと会話しながら二人で「メロディをいろいろ作った」後に、Sosaがメロディのガイドヴォーカルを録音した。また「So show me/I’ll show you」のような英語の歌詞もこのスカイプ・セッション中に作られたもので、そのまま歌詞として残っている。これ以外の歌詞とラップ・パートは、その多くが韓国で作り直された。



チェインスモーカーズ風の楽曲のためにDJスウィベルを雇ったのと同じように、Big Hitはアリ・タンポジに「Airplane pt. 2」のラテン風ビートの上でのトップライニングを依頼した。タンポジはカミラ・カベロの「Havana」を共作して、この曲がヒットしたことが依頼の理由である。タンポジは頻繁に共同作業を行うリザ・オーエン、ロマン・カンポロも引き込んだ。オーエンによると、特定の指示があったらしい。「BTSは自らの旅を説明するようなものが欲しかったみたい。ゼロから始めて、世界中を旅して回る現在に行き着くまでの旅をね」と説明した。

「Airplane pt. 2」のメロディの最初のアイデアを出したのがカンポロだった。「BTSはアメリカのポップ・ミュージックの全ての要素が融合された音楽だ。そして彼らは全ての要素に対し平等に情熱を注いでいる」とカンポロが言って「ソングライターとしての可能性は無限だ」と続けた。最終的に出来上がった曲は、豊かな歌唱と無愛想でスタッカートするラップを行き来するものだった。「BTSは私たちが作ったどのメロディにも完璧にハマったの」と、タンポジが付け加えた。

トップラインは遠隔操作でまとめ上げられるとはいえ、ミキシング工程は意見やデータの交換が必要となってくる。BTSチームは彼らが求めるスペックに完全に合うサウンドにするための詳細を提示するのだ。「作業をしていて『連中はいつ寝るんだ?』と思ったことが何度もあったよ」と、サム・クレンプナー。彼は、2013年以降ジェイムス・レイノルズと一緒にBTSのミキシングを行っているエンジニアだ。「僕たちがミックスを送ると、彼らは起き出して、修正点を教えてくれる。たぶん1時間寝て起きるって感じだと思うよ」と述べた。

Translated by Miki Nakayama

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