ー特にばかばかしいアイデアをミュージシャンに提案するのは、大変なのでは?そうね、まず説明しなくっちゃいけないからね。レディ・ガガの場合、彼女の前でひととおり企画をプレゼンしたわ。彼女は「まじ? あなたたちふざけてるの?」って感じだった。でも、いわゆる“おばかジェームズ”のノリなんだってことを理解したら、ちゃんと了承してくれた。ガガが出演した回は、ジェームズがガガの恰好をして登場して、ミートドレスに対してガガがダメ出しする、っていう内容だった。最初にこのアイデアを伝えた時、彼女からは「それはやらない。もうミートドレスは過去のものだから」って言われたわ。でも、見てわかる通り、ジェームズが着るっていうのがポイントで、結局おもしろい番組になったわ。
ハリー・スタイルズの時は衣装の早変わりをやったわね。レッド・ホット・チリ・ペッパーズの時は、ジェームズがシャツを脱いで上半身裸になった。ジェームズ・コーデン? お前誰?って(笑)。大爆笑だったわ。
ー“カープール・カラオケ”にも関わっていらっしゃるんですか?ええ、かなり大部分をね。いつもApple Musicと格闘してるわ。
ーヒット企画になった今、オファーもだいぶ楽になりましたか?確かにそうね。ビヨンセとか、テイラー・スイフトとか、ドレイクみたいなアーティストに出てほしいんだけど、いまのところ企画どまりね。ジェームズはかなりの時間をかけて、曲を覚えているわ。でもそうね、アーティストのほうからやりたいっていうケースは、番組スタート当初よりもずいぶん増えたわ。
ー“カープール・カラオケ”でお気に入りのエピソードは何ですか?どの回も面白いわね。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズの時は、ジェームズがとくに楽しんでたみたい。LAの住宅地のほうを走ったんだけど、途中で彼らが車の外に出てダンスを踊り始めたり、出店で果物を買ったり、近所の女性が騒ぎ出したり。我々は車の中にいたんだけど、騒ぎ声が中まで聞こえてくるもんだから、ジェームズとメンバーは車を飛び出して仲裁に行った。後でアンソニーがことの顛末を説明して・・・でも、この辺のくだりはオンエアでは使わなかったのよね。
ジェームズが曲からギャグをひねり出すのも見ていて楽しいわね。なにかの曲に反応して、私が予想もしないような笑いを見出すのよ。だからApple Musicを担当しているチームもネタ出しを楽しんでいる。シーアにバランスエッグをさせたときの話をしようかしら・・・あ、エド・シーランの回も面白かったわね。「50個のチョコボールを口の中に突っ込んでいただきたいんです。何個入るか、挑戦していただきたくて」って説明したのよ! 想像してみて! “カープール・カラオケ”の設定は変わってるけど、いったん見ればわかるわよね。
ーなんだか、ゲストにおかしなことをやりたいと思わせることに情熱を注いでいるみたいですね。私の仕事の大部分はコミュニケーション。バカバカしいアイデアにもったいぶった理由をつけてあげることなの。かなりの時間をかけて、番組の企画とオンエアする曲の交渉をするのよ。正直言って、この手のことに関しては、面白くなかったらやらないわ。
私が一番好きなのは、スタジオで“カープール・カラオケ”を観客に見せるとき。私はできるだけ映像を見ないようにしているの。その代わり、観客が爆笑したり、楽しんでいるのを見るのが好き。ここまでかけてきた努力がすべて報われる瞬間ね。