ローリングストーン誌が選ぶ、2018年上半期ベストムービー・トップ10

ローリングストーン誌が選ぶ、2018年上半期ベストムービー・トップ10

スーパーヒーローものから超常現象系、ブラックコメディから『ブラックパンサー』まで、ローリングストーン誌の映画評論家のピーター・トラヴァーズが今年上半期に劇場公開された名作をまとめてご紹介。

もし仮に1年の長さが半分になって、7月1日までに公開された作品の中から今年のベストムービーを選ばなくてはならなくなったら? 確かに、『Action Point(原題)』とか『フィフティ・シェイズ・フリード』、『Gotti(原題)』とか『スーパーフライ』などなど、くだらない作品ばかりが続いた。でも、落ち着いて。不作と思われた今年、ハリウッドのゴミ山の中にもキラリと光る優秀作品があった。

事実、ライアン・クーグラー監督は『ブラックパンサー』をアカデミー協会の会員も思わず票を投じたくなるほどの作品に仕上げ、マーベル初のオスカー受賞も実現しそうな勢いだ。『Hereditary(原題)』のトニ・コレットや『First Reformed(原題)』のイーサン・ホーク、『クワイエット・プレイス』のエミリー・ブラント、『ビューティフル・デイ』のホアキン・フェニックスらは、すでにオスカーの呼び声も高い。もしこの先下半期に、ブラッド・バード監督の『インクレディブル・ファミリー』やウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』を超える作品が出てくれば、アニメーション映画は今年ルネサンス期を迎えることとなるだろう。それでは、筆者が選ぶ2018年上半期ベスト10映画をアルファベット順にご紹介しよう。

『ブラックパンサー』

マーベル史上初、黒人が主役のスーパーヒーローものは、マーベル・シリーズの最高傑作――失礼、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』もありましたな――かつ、上半期No.1ムービーだ。ひょっとすると、コミック原作ものとしては初のアカデミー賞作品賞も夢ではない。奇才ライアン・グーグラー監督が主役に抜擢したのは、チャドウィック・ボーズマン。アフリカの架空の国ワガンダの王と悪と戦うブラックパンサー、2つの顔を持つ役柄を演じた。また、高度に発展した国を支える女性たちの存在も見逃せない。ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、レティーシャ・ライト、アンジェラ・バセットなど、彼女たちのおかげでグルーガーは革命的ともいえる偉業を成し遂げた。

『スターリンの葬送狂騒曲』

今年一番のコメディ映画(しかもダントツNo.1)が、粛清を繰り返すロシアの独裁者ヨシフ・スターリンの死をめぐるドタバタ喜劇になろうとは、いったい誰が予測できただろう? だが、さすがはアーマンド・イアヌッチ監督。これまで『イン・ザ・ループ』やHBO放映のドラマ「Veep(原題)」でイギリス人らしい政治風刺を発揮してきたが、今回は単純な権力争いのナンセンス・コメディでさらに一皮むけた。トランプ大統領と金正恩が繰り広げてきた「こっちの武器のほうがスゲーぞ」という意地の張り合いとどっこいどっこい。さらにイヌアッチ監督は、ニキータ・フルシチョフ役に今世紀最大の個性派俳優、スティーヴ・ブシェミを起用した。彼の演技は、アメリカはもちろんロシアでも、数々の映画賞にノミネートされること間違いなし。もちろん作品のほうも賞レースの話題となるだろう。
日本は、8月3日(金)より全国ロードショーされる。

Translated by Akiko Kato

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