オダギリジョーと片桐健滋監督が語る「コメディ」の魅力と難しさ

映画『ルームロンダリング』に出演するオダギリジョー(左)と脚本・監督と務めた片桐健滋(右)(Photo by Takanori Kuroda)

いわくつきの「事故物件」を転々とし、自殺や殺人などが起きた部屋をクリーンな空き部屋へと“浄化”する、いわゆるルーム・ロンダリングを生業とする八雲御子と、そんな事故物件に住み着く幽霊たちとのハートフルな交流を描いた映画『ルーム・ロンダリング』が7月7日より劇場公開される。

主演を務めるのは池田エライザ。これまでは割と勝ち気な役どころの多かった彼女だが、本作では孤独で内向的な“文系女子”を見事に演じ、新境地を切り開いた。そして、そんな彼女に仕事を斡旋しながら影で見守る叔父・吾郎を、オダギリジョーが好演している。

「ストーカー」や「ネグレクト」、「外国人のオーバーステイ」と言ったシリアスな問題をモチーフにしながら、思わずクスッと笑ってしまうようなユーモアを随所にちりばめた、ちょっと不思議なファンタジー。原作は、これが長編監督第一弾となる片桐健滋。TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2015で準グランプリを受賞している。

今回は片桐監督とオダギリに、映画の裏話はもちろん日本映画の現状についても熱く語ってもらった。

──最近は原作を映画化した作品が多い中、オリジナルの脚本で、しかもこんなに面白い作品ということに感動しました。プロットもとても斬新ですが、オダギリさんはオファーを受けたときにどう思いましたか?

オダギリ:おっしゃる通り、今はオリジナルの企画ってあまり目にしないので、まずそのことがとんでもなく嬉しかったですね。しかも、片桐さんや梅本(竜矢:脚本)くんという、昔から知っている人たちがオリジナルの作品を書き、それがTSUTAYAで賞を獲ったということも誇らしくて。内容も、日本映画にあんまりないジャンルというか。その独特の世界観に、隙を突かれたような気がしました。

──オリジナル作品の方が、オダギリさんも気合いが入りますか?

オダギリ:もちろん、原作を映画化する作品を全否定するつもりはないんですけど、あまりにそっちに寄り過ぎている今の日本映画の状況は、嘆くしかないと個人的には思っています。オリジナリティを発揮した映像作家の作品が、世界レベルでは当たり前に作られているのに、日本だけ置いていかれていいのかなと。そういう、現状を危惧する気持ちがここ10年、15年くらい積もりに積もっているところがあって。話は少しずれますが、是枝監督がパルムドールを取ったじゃないですか。オリジナルの脚本で世界を取れたなんて最高ですよね。日本にもそうやってオリジナルで勝負出来る人達はたくさんいるんです。そういう才能にお金が集まりにくい日本映画界の状況が早く変わって欲しいと強く願いますね。だからこそ、僕はオリジナルの作品を応援したいし、オリジナルというだけで、出来れば参加したいという気持ちはありますね。

──オダギリさんがおっしゃった、「日本映画にあんまりないジャンル」ということを、監督自身は意識しましたか?

片桐:そうですね。例えば僕は、昔から伊丹十三さんの映画が好きなのですが、その辺のところ……「ちょっと不思議なファンタジー」みたいなジャンルって、他の人はあまりやらないですよね。おそらくやると、下手すると火傷するから(笑)。ものすごいチープになってしまうか、センスのない作品になってしまうじゃないですか。だから、そこは1本目だからこそトライ出来たのかも知れないし、度胸試しの気持ちもありましたね。うまくいけば、このジャンルに自分の居場所が作れるかなと。

──オダギリさんからは、カメラの内外で強いサポートがあったそうですが、それは例えば?

片桐:一番大きかったのは、セリフの有無ですね。このセリフは必要かどうか、無くても伝わるかどうか。という判断が、じぶん1人ではなかなか出来なくて。削ることって、最初すごく怖いんですよ。でも、オダギリさんといろいろ話をしていたら、「このセリフは無くてもいいな」という部分が結構出てきたんです。それはかなり大きかった。あと、オダギリさんはお芝居をしている時も、控室にいる時も、基本的にニュートラルな人なんですね。あまり感情の起伏を出さない人だから、僕が現場でちょっとワタワタしてしまっても、オダギリさんとお話しさせてもらうことで、気持ちをリセットさせてもらうことが多かった。そこも助かりましたね。


©2018「ルームロンダリング」製作委員会

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