レディオヘッド、「ブロウ・アウト」が炸裂した1994年のパフォーマンスを振り返る

2008年の東京国際フォーラム公演以来、10年ぶりに「ブロウ・アウト」を解禁したレディオヘッド(Photo by Christian Bertrand / Shutterstock.com)

現在ツアー中のレディオヘッドが、7月6日に行われたシカゴ公演で『パブロ・ハニー』収録の名曲「ブロウ・アウト」を披露したことで話題となっている。前回この曲がプレイされたのは、2008年の『イン・レインボウズ』ツアーで追加公演として行われた東京国際フォーラム2デイズ以来実に10年ぶり。本稿では、1994年のパフォーマンス映像と共に「ブロウ・アウト」の知られざるストーリーに迫る。

現在『ア・ムーン・シェイプト・プール』ツアー真っ最中のレディオヘッドは、過去の作品の中から、「プラネット・テレックス」、「オプティミスティック」、「トーク・ショウ・ホスト」、「キッド・A」、「ライク・スピニング・プレイツ」、そして「クリープ」といった名曲を久々に披露し、ファンを喜ばせている。7年ぶりに日の目をみた「クリープ」に至っては驚くなかれ、すでに18回も演奏しているのだ。だが、一番のビッグ・サプライズは7月6日、シカゴで演奏した「ブロウ・アウト」だろう。この曲は、2008年の東京2公演を除けば、実に21年間眠ったままだったのである。

1993年のデビューアルバム『パブロ・ハニー』の最後に収録されている「ブロウ・アウト」は、初期の頃は、アンコールの締めソングとしてよく演奏されていた。今回ご紹介するのは、1994年5月27日、ロンドンのアストリアで収録された見ごたえある映像。当時、観客の多くは「クリープ」目当てだったが、ひとたびライブが始まれば、懐疑的なファンもたちまちレディオヘッド信者へと化したものだ。このライブから数か月後、レディオヘッドは映画『クルーレス』でジョークのネタにされている。アリシア・シルヴァーストーン演じる主人公が、ラジオから流れる「フェイク・プラスチック・ツリーズ」を耳にして、「カレッジラジオにありがちな青春ソングね」と一笑するのだ。だが、そんなカレッジの学生たちのおかげで『ザ・ベンズ』はミリオンセラーとなり、1997年の『OKコンピューター』は未曾有のヒットの基盤を作ったのだ。



1994年の「ブロウ・アウト」(ご覧いただいている映像)は、1995年にリリースされたDVD/VHS『ライブ・アット・ザ・アストリア』からの抜粋。意外にも、1回のステージをまるごと収めたオフィシャル映像はこれ以降まったくリリースされていない。2001年にライブ・アルバム『I Might Be Wrong: Live Recordings』がリリースされてはいるが、ここに収録されている8曲は、同年夏のツアーのさまざまなライブから抜粋したものだし、去年『OKコンピューター』の豪華版として再リリースされた『OK Computer OKNOTOK 1997 2017』には、未発表曲やB面曲、デモ音源など満載なのにも関わらず、ライブ音源は1曲も収録されていなかった。なんとも残念だ――彼らこそ歴代屈指のライブバンドなのに、ライブ音源を聞く術はブートレッグ盤しかないのだから。

ぜひとも今回のツアーではたっぷりライブ音源を収録していただいて、数年前のブルース・スプリングスティーンのように、いつの日かファンの為に放出してくれることを願うばかりだ。『ライブ・アット・ジ・アストリア』は素晴らしい内容だが、いつまでも「レディオヘッド唯一のライブ映像」はこれだけ、というわけにはいくまい。

Translated by Akiko Kato

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