フジロック現地レポ「MGMT、どしゃ降りの中で繰り広げられた桃源郷」

7月28日(土)、フジロック2日目のレッドマーキーに出演したMGMT(Photo by Shuya Nakano)

ローマの古代遺跡のような白い柱や、大小様々な観葉植物、さらにはエアロバイク(!)まで置かれたステージ。これから始まるMGMTのパフォーマンスが、一体どんなものになるのかセットを見ただけでワクワクしてくる。定刻前から雨足はどんどん強くなり、始まる頃にはバケツをひっくり返したような土砂降りに。屋根のあるレッド・マーキーは、雨をしのぎに駆け込んできた人たちも含めて文字通りパンパンの状態となった。

謎の呼び込みの後、5人がステージに現れる。筆者が観た位置からははっきりと確認できなかったのだが、甲冑や甚平を纏ったメンバーもいたらしい。もうもうと立ち込めるスモークと、幻想的なライティングの中で、シンセの音がどんどん重なっていく。すると、ステージ後方には最新アルバム『Little Dark Age』に描かれていた、あの不気味なピエロの巨大なバルーン(?)が膨らみ始めた。


Photo by Shuya Nakano

コズミックでサイケデリックなオープニングの後、満を辞して不穏なエレクトロ・ファンクチューン「Little Dark Age」から本編はスタート。音源よりもワイルドな演奏で、特にベースの重低音が下腹部を蹴り上げる。途中、バロック調のピアノ(ハープシコード?)をフィーチャーしたブレイクを経て、歌詞を“Fuji Rock”に変えてアンドリュー・ヴァンウィンガーデン(Vo、Gt)が歌うと、フロアからは歓喜の声が上がった。


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano

外は相変わらず土砂降りが続き、強風により会場内にも容赦無く雨が降り込んでくる。そんな中、「Time To Pretend」の、あの印象的なイントロが鳴り出した時には思わずグッときてしまった。たとえ外の世界がどんなに荒れ狂っていようとも、この閉ざされた空間では桃源郷のような音楽が僕らを包み、守ってくれている。そんな安心感を、ここに集う人たちと共有している喜びで胸がいっぱいになったのだ。

以降も新作からの楽曲を主軸としながら、過去の人気曲をちりばめる。「When You Die」は、『Solid State Survivor』の頃のYMOを思わせる“和”なシンセをフィーチャーした、テクノポップ・サーフミュージック。無数の花をあしらった映像が美しい。狂おしいほどデカダンなエレクトロポップ「Me And Michael」では、ヴォーカル・チョップを駆使したユニークな変拍子のあとウェーブが巻き起こり、隔離された空間がさらなる一体感に包まれた。

この日のピークは、やはり彼らの名をほしいままにした代表曲「Kids」。シンセのフレーズに合わせ、「オーオーオー!」とシンガロングする人々や、両手を上げ、恍惚の表情でゆらゆらと踊る人々、楽しそうにピョンピョンとジャンプする人々がひしめき合う。続いて最新曲より、軽快なニューウェーヴ・ポップ「She Works Out Too Much」を演奏。“彼女は運動し過ぎなんだよ”という歌詞の内容に合わせてか、アンドリューがエアロバイクに跨がり、漕ぎながら歌う姿に会場からは笑いが起きた。

そして、本編ラストはファースト・アルバム『Oracular Spectacular』から「The Youth」。美しくも哀愁ただようメロディが、この夢のような時間の終わりを告げているようにも響く。全員でシンガロングした歌詞“The youth is starting to change”(その若さが変化し始めている)も、そんな気分とシンクロして少々センチメンタルな気分に。

名残を惜しむようにアンコールが鳴り響き、再び登場した5人。「フジロックはとても素晴らしい場所。ここで演奏出来て、本当にうれしい」とアンドリューが挨拶した後、「Hand It Over」をしっとりと演奏し、この日のステージに幕を下ろした。


Photo by Shuya Nakano

会場の外に出ると、すっかり雨も弱まっていて、さっきまで土砂降りの中で繰り広げられていた桃源郷が、本当に夢だったような気がした。



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