プッシー・ライオット、反プーチンの陰謀で告訴された少女の解放を求め新曲を発表

2018年5月25日、ボストンのオールストン地区にあるハーバード・アスレチック・コンプレックスで行われたボストン・コーリング・ミュージック・フェスティバルで演奏するプッシー・ライオット。(Photo by Craig F. Walker/The Boston Globe via Getty Images)

プッシー・ライオットは、反プーチンの陰謀を企んだとして10年の禁固刑に直面している10代の少女の解放を求め新曲を発表した。この問題を広く知らしめるための激烈な公開書簡と共に楽曲を公開。

政治的な抗議運動を行うプロトパンク・グループ、プッシー・ライオットのメンバー4人が、FIFAワールドカップの決勝戦中にピッチに乱入した罪で逮捕されて2週間後、グループは自分たちの釈放を求め、同時に冤罪でロシア政府によって収監された一人の少女の窮状に注目を集めるために、新たなシングルをリリースした。

18歳のアーニャ・パブリコワは3月にロシア政府の転覆を企てたとして逮捕された。「過激思想」で正式に告訴された彼女は10年の禁固刑に直面している。パブリコワの弁護団は、この10代の少女はロシア警察の罠に陥った被害者であると主張している。実はロシア警察がパブリコワと親友がテレグラムと言うメッセージサービス上で二人が作ったグループチャットに潜入していたのである。

プッシー・ライオットの新曲の曲名と歌詞は、マイ・リトル・ポニー好きのパブリコワがユニコーンのぬいぐるみを抱く写真にインスパイアされた。「ユニコーン・フリーダム/Unicorn Freedom」は8ビットに触発されたキラキラ輝くエレクトロ・ポップ曲で、プッシー・ライオットのナディア・トロコンニコワが脈動するテクノビートの上で、おおよそ「ねえ、警官さん、私たちを刑務所に入れないで/私たちを護りにユニコーンがここに来ているの」と訳される歌詞を歌っている。



この曲に付随する公開書簡でトロコンニコワはパブリコワの窮状を次のように説明している。

アーニャが何をしたのか? 彼女と19歳になる彼女の友達マリア・デュボビックは、ウラジミール・プーチンに批判的なテレグラムのチャットに参加した。このチャットの参加者たちがマクドナルドで行われたオフ会で男子のこと、テストのこと、政治のことをおしゃべりしていた。

このオフ会にはロシア連邦保安庁(FSB)の職員が紛れ込んでいて、この後にこのオフ会の情報をFSBと警察に提供し、これによって参加者9人が逮捕されるという残忍な事件が起きた。警察はこれらの活動家たちが『過激思想コミュニティ』を形成し、『ロシア大統領ウラジミール・プーチンを転覆させる』ことを目標としたと言っている。アーニャ・パブリコワは最年少で、ユニコーンの写真が所狭しと貼られた彼女の部屋に警察が突入したとき、彼女はまだ17歳だった。『お前は麻薬中毒者か? 我々はお前をこれから20年間、刑務所に収監する。刑務所を出る頃には40代の醜い婆さんだな。お前の両親だってお前を2日で忘れるよ』と、アーニャを逮捕しながら警官たちが言った。活動家の一人、ラスラン・コスティレンコフは逮捕後に拷問されたという報告もある。

アーニャも他のオフ会参加者も犯罪とは一切無縁で、マクドナルドでおしゃべりしていただけだ。しかし、18歳になったアーニャは今、おしゃべりしていた罪で10年の禁固刑に直面している。この事件は、過去2年間に政治に真剣に取り組み始めた若者たちに恐れを抱かせることを目的とした、プーチン政権が実施する大きな戦略の一環なのだ。学校に通う年齢の少年少女たちが通りに出て、もうプーチンはたくさんだと言い始めた。そして、2017年3月26日と2018年6月12日に政治腐敗防止の大きな抗議デモが開催され、プーチンの大統領就任式の数日前の2018年5月5日には、ロシア各地で集会が行われた(5月5日はロシア国内で1600人以上の集会参加者が逮捕された)……クレムリンに統制されている教育機関は生徒たちに背を向けて敵対し、子どもたちも親たちも恐怖にさらされている。集会では13〜14歳の子供まで逮捕され、中には暴力的に捕まえられたケースもある。

ロシア政府がメッセンジャーであるテレグラムを禁止してから、すでに4ヵ月が経過した。テレグラムは若い活動家も含む私たち全員が情報を得たり、共有したりする場所だ。テレグラムの情報が暗号化されていることにロシア政府は激怒している。しかし、それでも私たちはテレグラムを使う。私たちにはVPN(仮想プライベート・ネットワーク)があるのだから。しかし、アーニャ・パブリコワの事件は、政治の話をしても安全だと信じている人たち全員への脅迫として、その存在感を示している。

私たちプッシー・ライオットは、プーチンお抱えのギャング集団が反プーチンの声を上げる者に行う仕打ちに衝撃を受けている。そして、この曲『ユニコーン・フリーダム/Unicorn Freedom』をリリースしてアーニャ・パブリコワを支援したいと思う。」

Translated by Miki Nakayama

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