中川翔子×長井龍雪「印刷会社の営業マンからアニメ監督に…異色の経歴に迫る」

中川:え、今までに最高でどのくらい掛け持ちしたことありますか?

長井:監督になってからだと、進行中の作品を作りながら次作の仕込みをして、あとは前の仕事が残っていたりすると、3タイトルくらい被ることはたまにありますね。

中川:す、すごい! 全然違う宇宙が頭の中に3つあるような状態ですよね? 初歩的な質問で恐縮なんですけど、アニメの監督さんが一番されている作業ってどんなことなのですか?

長井:僕の場合は絵コンテを描く作業ですね。TVシリーズの場合は作画監督が複数名いるので、同じシナリオを読んでいても、キャラクターの解釈など人によって全然違うんですよ。そこを整えて、作品全体の統一感を出していくのも総合監督である自分の仕事だったりしますね。例えばアニメーター出身の監督だと、フィニッシュまでずっと付きっきりで、ひたすら絵を描きまくる人もいらっしゃいます。なので、監督によって作業は異なってくるのかなと。

中川:そうか、監督になるまでの道のりによってやる作業も変わってくるのですね。作業の中で、最も快感を覚えるのはどのタイミングですか?

長井:「ダビング」という作業ですね。アニメの進行というのは、まず絵コンテを描き、それをもとに作画をしてからアフレコで音声を入れてもらう。その段階ではまだ絵と声だけの「朗読劇」みたいな感じなんですが、そこにBGMや効果音を「ダビング」した瞬間っていうのが、僕の中ではアニメの完成形のイメージがバーッと広がる瞬間というか。それまでバラバラに進んでいた作業が「アニメ作品」という形に統合されて、「お、いい感じになったな!」ということが、初めて実感として分かるポイントなんですよね。

中川:声優さんやアニメーターさんたちが、監督さんの頭の中にあるイメージを具現化するためにいろんな角度から作業を進めて行って、それが一つになる瞬間なんですね。

長井:そうです。時には絵が間に合わなくて、ラフで描いたものに声を付けていく場合もあって。そういうときは声優さんに、完成形の絵を想像しながら演技をしてもらわなければならないんですけど、そこに後から完成形の絵を足して、期待通りかそれ以上の仕上がりになったときは、最もうれしい瞬間ですよね。

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