米国宇宙軍は「未来的な製品のマーケティング・コンセプト」でしかない

2018年8月9日、国防総省でトランプ大統領の推進するスペースフォースについて会見するマイク・ペンス副大統領(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

8月9日、ペンス副大統領は会見の中で、かねてから噂されていたトランプ政権によるUSスペースフォース(米国宇宙軍)の設立を2020年までに実現させると述べた。おそらくあり得ないだろうが、もし実現したとしても、実質的には地球上での官僚政治となるだろう。

宇宙空間では、軍の働きに対する感謝の言葉を伝えようにも声が届かない。その意味では、そして恐らく間違いなく、米国で現実に進められているUSスペースフォース(米国宇宙軍)の入隊者は、大きな犠牲を払うこととなるだろう。

8月9日、ペンス副大統領は会見の中で、かねてから噂されていたトランプ政権によるスペースフォースの設立を2020年までに実現させると述べた。実現すれば米国にとって第6の独立した軍隊となる。陸軍、海軍、海兵隊、空軍、沿岸警備隊の退役軍人たちは間違いなく、新たな軍の設立をジョークのネタにして盛り上がることだろう。

2018年に米国が生み出した様々なものと同じくスペースフォースも、未来的な製品のマーケティング・コンセプトにすぎない。ペンスの発言とは裏腹に、その実現性は怪しい。シリコンバレーで立ち上がり、今や不祥事で落ちぶれたセラノスを思い出してほしい。同社の血液検査器“エジソン”はろくに機能しなかったものの、そうそうたるメンバーが取締役に名を連ねたことも後押しし、投資家から数十億ドルを吸い上げた。取締役の中には退役海兵隊大将のジェームズ・マティスもいたが、彼はトランプ政権の国防長官に指名されたことを受け、セラノスの取締役を辞任している。そのマティスが今度は、スペースフォースの設立を監督しているのだ。アジア大陸における結果の見えない複数の戦争において、軍人も民間人も関係なく犠牲にできることを証明したマティスは、新軍隊設立におけるドン・ドレイパー(テレビドラマ『マッドメン』の主人公)にすぎない。

いったいなぜ、新たな軍隊を設立する必要があるのだろうか?

米国は1947年に空軍を設立して以来、新たな軍隊は設立していない。しかも空軍は、どこからともなく発生したものではない。陸軍航空軍から独立して各軍から将校を引き抜き、直前に米軍が参加していた戦争を詳細に検討した上で結成された軍隊だった。空軍設立までの約30年、戦時中に航空機は陸軍によって運用されてきた。

しかし、スペースフォースにそのような背景はほとんどない。半世紀にわたり米軍は、宇宙空間を経由して地上の目標へ向けて発射するミサイルをどうにか整備してきた。さらに衛星を使って情報収集にあたったり、“電子戦”を遂行するなど、様々な軍事行動をコーディネートしてきた。これらのリソースは、空軍、海軍、米戦闘部隊司令部、米国家安全保障局(NSA)、米国家偵察局(NRO)などの政府機関で利用されている。少なくともスペースフォース設立の根拠として良くない点は、同軍がこれらリソース全てを、何らかの形で統合する可能性があるということだ。

Translated by Smokva Tokyo

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