二人がこの悪戯めいた演奏を始めたのが2017年で、「ブリーディング・ミー/Bleeding Me」や「I Disappear(原題)」のようにライブであまり披露されないメタリカの楽曲のリフをライブの途中に挟み始め、それに続いて(「アネシージア)プリング・ティース/(Anesthesia) Pulling Teeth」の故クリフ・バートンのベースソロをトゥルージロが弾いたことがきっかけだった。そのとき、ハメットとトゥルージロの二人は自分たちのデュエットの可能性に気付き、ライブを行っている国や都市に縁のあるアーティストの楽曲を取り上げて、自分たちなりに演奏することを始めたのである(といっても、トゥルージロはついつい「アネシージア」のソロをプレイしてしまうが)。どの曲もベースとギターだけで、ときどき譜面台を立ててトゥルージロが歌う程度の、非常にシンプルなカバーとなっているが、彼らのチャレンジが観客のお楽しみにもなっている。最近行われたカナダのウィニペグでのコンサートでは、カナダのロックアンセムであるバックマン・ターナー・オーヴァードライヴの「Taking Care of Business(原題)」を、ウィスコンシン州マディソンではガービッジの「Stupid Girl(原題)」を、ストックホルムでは「どうにでもなれ!」と言ったあとでABBAの「ダンシング・クイーン/Dancing Queen」を演奏した。とにかく、彼らの選曲は観客の予想を裏切ることが多いのだ。
「曲やアーティストを決めるとき、けっこう苦労することがあるよ」と、北米ツアーが始まった頃にトゥルージロがローリングストーン誌に教えてくれた。「(サウスダコタ州の)スーフォールズでライブをやるとしたら、『こりゃあ、けっこう掘り下げないとな』ってなる。でも、その場所に最適の曲が見つかるとマジで気分がいい。カークと俺がその町出身のバンドのソングライターたちに敬意を表わす方法がこれなんだ。それこそ、ネブラスカ州オマハとかに行くと、本当に楽しくて仕方ないよ」と。(ちなみにスーフォールズで彼らが選曲したのはネイティヴアメリカンのブルースロックバンドIndigenousの「Things We Do(原題)」だった。)