30年ぶりのアポロ・シアター凱旋、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの過去〜現在

30周年を祝ってアポロ・シアターでパフォーマンスするニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック。(Photo by Marcello Ambriz)

「君たちに初めて会ったとき、誰も君たち、ボストン出身の白人少年たちの実力なんて期待していなかった」

蒸し蒸しするハーレムの日曜の午後、長年アポロ・シアターの歴史を見守ってきたミスター・アポロことビリー・ミッチェルが、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのドニー・ワールバーグ相手に楽屋で昔話に花を咲かせている。「でも、君たちはやってくれたよ!」とミッチェルが続ける。「会場は熱狂に包まれた。みんな大騒ぎだった! 君たちの写真は今でも自宅にあるよ」

彼らが世界で一番有名なボーイズ・グループになる前、ニュー・キッズはボストンのクラブシーンとR&Bラジオ局でその頭角を現し始めた。1988年のアルバム『ハンギン・タフ』が成功しなければ、彼らはそのままボストンに居続けたことだろう。彼らがブレークするきっかけとなったこのアルバムの、シンプルなポップ・ソングにファンクとソウルを程よくミックスした楽曲が音楽チャートを駆け上ったのだ。今回のミッチェルとの再会は、『ハンギン・タフ』のリリース30周年記念を祝う特別コンサートを行うためにアポロに戻ったことで実現した。このアルバムは、2018年に一緒にツアーを行ったソルト・ン・ペパー、ノーティー・バイ・ネーチャー、デビー・ギブソン、ティファニーが参加した「80s Baby(原題)」などの新たなマテリアルを収録して、2019年初めに再発する予定となっている。

ミッチェルとの再会の直後、グループのメンバー5人、ワールバーグ、ダニー・ウッド、ジョー・マッキンタイア、そしてジョーダンとジョナサンのナイト兄弟が、倉庫で発掘された古いビデオテープの周りに集まり、アポロのアマチュア・ナイトに出演した日時がいつだったのかを全員で考え始めた。1988年だったことは間違いない。『ハンギン・タフ』がリリースされたのは同年9月。「プリーズ・ドント・ゴー・ガール」は同年4月初めにリリースされていたが、鳴かず飛ばずの状態だった。ファースト・アルバムは失敗作。ワールバーグは「あの曲がヒットしなかったら俺たちは終わりだった」と当時を振り返る。

簡単には認めてくれないことで有名なアポロの観客の前に立ったとき、とても緊張していたが準備万端でもあったと、彼らは記憶している。そして、タスクフォース・ジャケットに身を包んだボストン出身の5人の少年たちは、「ユー・ゴット・イット(ザ・ライト・スタッフ)」を歌い踊りながら、足音をたててステージに登場した。このとき、アポロのハウスバンドへ渡す楽譜を忘れた彼らは、カラオケに合わせてパフォーマンスしたのだった。少しすると、会場内にリズムに合わせて手拍子や足を踏み鳴らす女性の姿がちらほら出てきたことに、少年たちは気付いた。そして、この日のセットが終わる頃には、観客全員が立ち上がって「白人少年たち、がんばれ!」と声援を送っていた。


Photo by Marcello Ambriz

Translated by Miki Nakayama

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