もはや「世界のMIIKE」としてその名を轟かす監督・三池崇史と、 映画デビュー以来、唯一無二の存在感で観る者の心をさらい続ける女優・満島ひかり。 間違いなく日本映画界の重要人物である2人に、『一命』という作品、映画作りに対する姿勢を語ってもらった。

三池崇史
いろんな人との出会いが映画を作る。
だから簡単に弱音は吐けない
——今回の『一命』は、『十三人の刺客』以来3作続けての時代劇になりますね。
「『十三人の刺客』で自分なりの時代劇が撮れたという手応えがあったんです。だったら、さらに新しいことにも挑戦できるんじゃないかと思って。以前、映画化されたことがある『異聞浪人記』という時代小説を再び映画化するのもひとつの挑戦で、あの飾らない文章の佇まい、その美しさに惹かれましたね。そういうシンプルな文章って行間に映像が詰まっているんです」
——時代劇で初めての3Dというのも大きな挑戦だったと思うのですが、現場はどうでした?
「使ったことがないカメラを練習せずに使うわけで、大変といえば大変でしたけど、自分にとっては大きなプラスになったと思います。普通、キャリアのある監督は手慣れた機材を使って得意な表現に走っていく。でも自分はそういう方向から逆走したかったんで」
——3Dの見せ方で特に注意したところはありますか?
「日本の空間って、小さいけどレイヤーが多く作れるんですよ。障子や襖、開けたところから見える庭とか。部屋が狭い分、空間が凝縮されて面白い画になるんじゃないかと思いましたね。ただ、3Dだということは特に意識しませんでした。逆にこれまでの映画って、平面に映し出される映像を立体に見せるために照明とかで工夫してたんですけど、そういうことから解放されるんじゃないかと思って。だって、海老蔵が突然3Dで飛び出したら驚くでしょ(笑)」
——確かに(笑)。市川海老蔵は映画初主演でしたが、役者としていかがでした?
「彼とやれたというのが、今回一番大きかったかもしれない。海老蔵は主役を演じることを真剣に楽しんでましたね。彼は役者でありながら演出家でもあるので、映画の現場を見ながらいろんなことを吸収しているんですよ。映画の役者って、現場が終わったら、その作品のセリフは二度と喋らないんですが、海老蔵みたいな古典の世界の人間はセリフや経験を蓄積していく。そういう姿勢には刺激を受けましたね」
——また、サントラでは坂本龍一と初めてタッグを組まれましたが一緒にやられてみていかがでした?
「プロデューサーのジェレミー・トーマスにすすめられたんです。『なんでサカモトとやらないんだ。お前たちは合うはずだ』って(笑)。坂本さんとは2日間スタジオにこもって、ラッシュを見ながら音楽について打ち合わせをしました。坂本さんからは『このシーン、普通だと音楽が入るんだけど、この流れからすると自分の中では音が鳴らないんです』とかいろんな意見が出て、それを密に話し合っていく。でも、いざ音作りとなるともう坂本さんの絶対領域で、すごい迫力でしたよ」
——また一緒にやってみたいと思われますか?
「ええ、自分なりに“これは!”と思う作品があれば。映画を作るものって、やっぱり“人間”だと思うんです。スタッフやキャスト、いろんな人との出会いが新しい表現を生んでいく。だから映画の可能性は無限なんだと思うし、簡単に弱音は吐けないと思いますね」
TAKASHI MIIKE
三池崇史 ● 1960年、大阪府生まれ。映画の専門学校を卒業後、今村昌平、恩地日出夫監督らに師事。91年、ビデオ作品で監督デビューし、95年の『第三の極道』で初の劇場映画を手掛ける。任侠社会を描いた作品を得意としつつも『ゼブラーマン』(2004)『クローズ ZERO』(2007)などメジャー作品でも辣腕をふるう。2000年の『オーディション』以降、海外の映画ファンにも熱狂的な人気を誇り、コンペティション部門に選出された昨年のベネチア国際映画祭でも『十三人の刺客』が絶賛された。
Text by Yasuo Murao
Photographs by Kaori Nishida
(満島ひかり インタヴューは次のページ)






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