映画監督としてのデビュー以来、海外の映画祭の常連となっている園 子温。
新作『恋の罪』では“女の目線で女を描く”ことに挑戦している。
毎回、役者たちを鍛え演技をレベルアップさせる、その方法とは?
近年の作品が海外で高い評価を受ける中、来年公開の『ヒミズ』がヴェネチア国際映画祭で最優秀新人賞を受賞するなど、世界が注目する鬼才・園 子温。ハードなテーマに果敢に斬り込む独創的な演出力、そして過酷なリハーサルで役者の新たな魅力を開花させる指導力は唯一無二。女性をテーマにした新作『恋の罪』は、日本映画に久しくなかった“女の映画”の新たな傑作だ。
——前作『冷たい熱帯魚』は中年男たちのノワールな物語でしたが、『恋の罪』は女性を題材にしていますね。
「やっぱりオジサンたちでヘトヘトになったから、しばらく男の映画は時期をおいてもいいかな、と思って。何より、邦画には女の子の映画が大量にあるけど、“女の映画”は最近ほとんどない。だから女の映画を撮りたかった。女をテーマに、女性のいろんな面を描いてみようと思ったんです」
——男性である監督が女性をテーマにして、女性の性や業みたいなものを掘り下げるのは大変な作業ではなかったですか?
「男目線の映画にならないようにすることは心掛けましたね。脚本を書いていく中で、男としての自分の嫌な部分にも何度も直面して、特に性的なところですけど、自分の女性に対する接し方とか、いろいろわかって反省もしました(笑)。こんな言い方は失礼ですけど、女性なりの考え方に気付かされたことも多かったですし。(周りにいる女性スタッフを見回して)そんなこと言ったら『当たり前でしょ、バカ!』って言われそうだけど(笑)。まあ、そんな当たり前のことさえ、これまで知らなかった。今回、あまりにも女性の視点に入り込みすぎて、しばらく男性としての性欲が起こらなかったくらいです」
——映画には、それぞれ問題を抱えた3人の女性が出てきますが、監督の中で特に思い入れがあるキャラクターはいますか?
「まず美津子(冨樫 真)といずみ(神楽坂 恵)という対照的な存在を描きたかった。話を進める役として、刑事の和子(水野美紀)が必要だったんです。いずみは、豊かな生活を送っていながらも結局、そこには何もない。そして、そこからどんどん堕ちていって、堕ちきったところで鼻血を出しながら微笑んでいるんです。坂口安吾は『堕落論』で“底まで堕ちないと自分はダメなんだ”ということを言ってるんですけど、いずみも堕ちきったところで自分というものを掴む。すごくポジティヴな堕ち方なんです。『冷たい熱帯魚』は救いのない作品だったので、今回はポジティヴなものにしたいと思っていて、だからある意味、この映画は女性讃歌でもあるんですよね」
——そんな3人の女性を演じた女優たちの演技が素晴らしかったです。やはり、リハーサルは入念にされるんですか?
「そうですね。まずリハーサルは相当の割合を占めて、芝居を作り上げてから撮影します。全員の頭の中にセリフが入っていて、そのまま舞台に上がって演じられるくらいまではリハーサルをやってますね」
——かなり厳しいリハーサルだと聞きました。役者さんとぶつかり合うこともあると思いますが、役者との関係の築き方について何か意識されていることはありますか?
「特に意識はしていないですけど、撮影が終わった後に肩を叩き合って“良かったね!”なんて言いたくないんですよ。よく映画の舞台挨拶で『撮影現場はほんわかして良い感じで、監督もいい人で……』なんて言ってますが、そういうのはあんまり好きじゃない。“もうあんまり会いたくない”っていう状態にするのが一番(笑)。もちろん、それが目的じゃないですけどね。やっぱり役者のために一番いいのは、彼らの良い芝居を引き出して、それを観客に見せることなんですよ。ただ優しい監督であってもしょうがない。そういう意味では、あんまり愛されないことも多々ありますけどね」






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