演じるってことができないから、撮影しながら、考えながら、
場面場面で役作りをしていった

ミュージシャンのスネオヘアーが、頭を丸め僧侶役に挑んだ、初主演映画『アブラクサスの祭』。出家したもののロックの道への未練を捨てきれない、ねじれた性格のお坊さんという難しい役どころを演じ切った作品が、この度DVDとして8月26日にリリースされることとなった。映画という音楽とは違う畑で、しかも主演という大役を果たした彼に、撮影中のエピソードや感じたことなどを聞いてみた。さらには、本業のミュージシャンとして、約3年ぶりに発表するセルフタイトルのアルバム『スネオヘアー』についても語ってもらおう。
——映画『アブラクサスの祭』のオファーのきっかけから聞かせてください。
「主人公の浄念ってお坊さんが音楽をやっていた設定なので、役者じゃなく実際のミュージシャンで探していたそうなんです。映画のプロデューサーの松田広子さん押田興将さんとは、映画『恋するマドリ』のサントラをやった時に面識があって、それで誘って頂きました」
——いきなりの初主演ですよね。
「脇役的な役柄で映画に出たことはあったんですけどねぇ。さすがに『できません』って最初断ったんです。でも『役者アプローチでお願いしているわけじゃないので、大丈夫ですよ』と言われて、じゃあやってみるかって」
——まず、スネオヘアーさんの坊主頭が衝撃でした(笑)。
「それが出演の条件でしたね(笑)。でも、これで剃らないのはダサいなと思って、きちんとお寺で剃髪式やって撮影に臨んだんです」
——悩みを抱えた鬱病のお坊さんという難しい役柄だったと思うんですが、役作り、監督とのやりとりなど、撮影はどのように進んでいきましたか?
「加藤(直輝)監督も初めての長編映画で、年齢も当時29歳と若いし、一緒に作っていこうって感じだったんです。ノイズ系やコアな音楽に詳しくて、まずは、そういう話から入っていきました。で、主人公は、原作者である僧侶で作家の玄侑宗久さんのお寺に実際にいた方がモチーフなんですが、その方の複雑な感じを理解するのが難しくて。玄侑さんにも『理解するのが無理だから』って言われたんですよね。僕は器用に演じることもできないので、撮影しながら“あの人ならどっちだろう”って、監督と場面場面で考えながら役を作っていったんです」
——小林薫さんや、ともさかりえさんという、共演者の方に助けられることは多かったですか?
「小林薫さんは、役柄と同じく温かく見守ってくれました。あと、酒をいっぱいおごってもらいました(笑)。ほんと、素人相手にやってもらうって感じで、(ともさか)りえちゃんをはじめ、周りの役者さんにおんぶにだっこ状態でした。僕の間合いはプロのそれと違うから絡みづらかったと思うんですが、それをきちんとやり取りとして転がしてもらえて、ありがたかったです」
——ある意味、役者さんとは違う変則的な演技がハマったのかもしれないですね。
「浄念という、ちょっと変わった人だからこそ、ギリギリ成立できたのかなって思います。まあ、演技の大変さもありましたけど、撮影で1ヶ月間、共演者たちと一緒に暮らしてくこと自体が新鮮で。プロの持ち場を見ているのは楽しかったです」
——個人的に印象的だったシーンはどこですか。
「お寺でのライブシーンや、海でギターを弾くシーンもですが、特に三面鏡で自分と向き合うシーンは印象的でしたね。気持ちが切り替わる重要な場面だったし、なんとか瞬きしないように頑張って。あと、半裸で、人生初の前バリを経験しました(笑)
——画面に見えない苦労もあったと(笑)。確かに、お寺の境内での演奏のシーンは、魂の開放感すら見える白熱したものでした。
「アイゴンさん(會田茂一)、中尾憲太郎くん、小松正弘さんとのセッションで、実際にライブを一発撮りしたんです。すごく寒かったんですが、演奏していて気持ちよかったです」
——スネオヘアーとして見ると、作中に出てきた曲のノイジーなオルタナ感って珍しいですよね。
「そうなんですよね。メロディーとかのしばりがない自由さがあって、その瞬間瞬間に出す音の刺激感が大きかったです」
——主人公の浄念と、共感できるとこはありましたか。
「浄念のような生き方はできないけど、葛藤してるところは共感できますね。僕は、全部答えが出ちゃうものにあまり興味が持てないんです。音楽やってるのも、葛藤して何かを言いたいからやっている。幸せだったら音楽をやる必要ないですもん」
——仕上がった作品を観ての感想は?
「人との関わり合いの描写がいいなって思いますね。僕が演じた浄念は面倒臭い人だけど、ほっとけなくて、いろんな人が関わって日常が繰り返されてく。ちょっと、寅さん的で、温かいですよね。まあ『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいな作品とは対極にあると思うんですけど、DVDを観てくれる人には、何か残ってくれればいいなって。頑張っている人に頑張れって言うんじゃない方法のエールやメッセージがあると思うんです。お坊さんは達観してる人って印象があるけど、実はこの主人公のように、こんなに悩んでる人もいる。だから大丈夫だってわけじゃないけど、“誰でも悩みはあるし”っていう励ましを感じてもらえればと思いますね」






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