(1)「ここに集まったのは、新しい未来を作るため」と繰り返し叫ぶサンボマスターの山口 隆に、会場が涙した。(2)メンバー全員が福島出身のオールスター・バンド、猪苗代湖ズ。(3)スターの風格をみせつけた福山雅治。
福島出身の箭内道彦が実行委員長を務め、メインスローガンに“NOTHING BEATS FUKUSHIMA, DOES IT?(福島はどんなことがあってもくじけないぜ)”を掲げたフェスティバル、「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」。福島にゆかりのある、または、この趣旨に賛同したアーティストが9月14~19日の6日間、福島県内を横断しながら行ったライヴイベントである。筆者が参加してきた4日目の9月17日、福島県郡山でのフェスをレポートしたい。
午前11時、現地に着くとすでに会場には大勢の人(最終入場者は1万5000人超)。会場内を歩くとフードコートには郷土料理を中心としたメニューの良い匂いが漂っているし、オーディエンスも思いっきり楽しんでいるようで、目につく誰もが笑顔だ。ただ、地元の観客にインタヴューをすると、不安な気持ちを吐露する人もいた。また施設本部になっている建物の正面入り口には、セシウムの測定結果がホワイトボードに記載してあった――「0.45sv/h」。この地、そしてここに集う地元の住民は、やはり目に見えない恐怖と闘っているのだ。
最初に観たのは怒髪天の演奏。北海道出身の彼らだが、今回の「LIVE福島」は6日間皆勤賞。汗だくになって歌う、怒髪天・増子直純の姿に心揺さぶられた。また、秋田県出身の高橋 優も全日程に参加。少しナイーヴな優しい歌声が福島の地に優しく響いた。
14時過ぎ、会場のテンションが一気に上がる。福島県出身の山口 隆率いるサンボマスターの登場だ。素晴らしいステージだった。MCでも愛とロックを全身全霊で叫ぶ山口は、まさしく歌で、みんなの心の闇を食い尽くした。「I love you & I need you ふくしま」での歌声は素朴で強く、優しかった。そして、最後の曲は「できっこないをやらなくちゃ」。この日、山口はMCで何度も言った。「悲しむためにここに集まったんじゃない。新しい未来を作るためだ!」と。その気持ちが集約された歌。気がつけば、オーディエンスもスタッフも、ステージ袖に集まった出演者も涙していた。
(4)6日間すべて出演した怒髪天の増子直純。(5)東北に南国の風をもたらしたBEGIN。(6)内田裕也はスペシャル・ゲストとして登場し、会場を沸かせた。
続いてはBEGIN。彼らのステージはまるで優しい風のようで、忘れてはいけない日本の大事な歴史を感じさせてくれた。スペシャルゲスト・内田裕也は「パワー・トゥ・ザ・ピープル」で圧巻のパフォーマンスを披露。これほどまでに人間臭いこの曲を、生で体験できたのは大きな収穫だった。会場が黄色い声援に包まれたのは、福山雅治が登場した瞬間。全国区の人気と、アリーナクラスのエンタテインメント・ロックを見せつける。この時ばかりは誰もが苦しい日常を忘れていたと思う。MCも絶妙。
そして最後に登場したのが、前述の箭内と山口に加え、松田晋二(THE BACK HORN)、渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)と、メンバー全員が福島県出身の猪苗代湖ズ。もう文句なしの盛り上がりである。もちろん、アンコールは「I love you & I need you ふくしま」で、出演者全員がステージに上がっての大合唱。その曲が始まった瞬間、僕はステージの真下にいた。見上げれば出演者の顔、顔。振り返ればフェンス越しにオーディエンスの顔、顔、顔。みんな曲が始まると涙を流していた。苦しかった半年間の涙だと思った。だが曲が進むにつれて、そのオーディエンスが笑顔になっていく。しかも不思議と、ひとりひとりの笑顔がハッキリ見える。大合唱となってはいるが、そこにいる1万5000人の声が塊ではなく、ひとりひとりの声としてハッキリ聴こえる気がした。そのことがうれしかった。この日、ロックは会場にいる全員に、そして、それぞれの心のあり様に届いた。
でも、すべての演奏が終了した時、ひとつになって残ったものがある。明日を生きる希望だ。約11時間に及ぶこの日の演奏は、そんな大きな土産を残してくれた。
Text by Joe Yokomizo





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